「『黄昏のビギン』の物語」〜日常が微熱をおびるとき

    2時間走の疲れをとろうと風呂をわかす。ネットラジオをBGMに入浴しようと、普段は聴かない田家秀樹さんの番組をクリックすると、聞き覚えのある歌が、男性ボーカルで流れていた。水原弘? 映画の挿入歌として彼が歌い、映画はヒットしなかったのに、歌だけが大ヒットになったのだという。ちあきなおみさんが歌ってることしか知らなかった。


    しばらくして、ちあきさんの『黄昏のビギン』が流れる。湯船につかりながら聴くこの曲も、やっぱりいい。熟年の男女の少し訳ありの、それでいてピュアな恋の匂いがかぐわしい。「はじめてのキス」という歌詞が、妙に初々しく響く。歌謡曲の懐深さをあらためて思う。最後は、大竹しのぶ&山粼まさよしのデュエットも聴いたが、やっぱり、ちあきさんのが一番いい。


    この歌をめぐるノンフィクション本があることを、その著者である音楽プロデューサーの話から知る。こんなちょっとした偶然が、暮らしの温度をほんの少し上げてくれる。