昔の大嫌い〜ゆで塩豚と茗荷とキュウリの和え物

   にがっ! 
   こんなマズいもんを、味噌汁に入れるなんて信じられへんわ・・・・・。小学校6年生の夏休み、人生初の一人旅は京都府綾部市にある母方の実家。最初の夜に出されたのが、茗荷(みょうが)と揚げの味噌汁だった。


   川での水遊びとカブト虫捕り、そして畑で採れるトマトを食べまくった実家での1週間。唯一閉口させられたのが茗荷だった。あまりに露骨に顔をしかめる僕を不憫に思ったのか、祖母も茗荷だけを小皿に出していいよ、といってくれた。


   あの苦みがむしろ好ましくなったのは、いつからだったろうか。浅漬けの素に赤唐辛子の輪切りを3、4個加え、キュウリの漬物をつくるときには、よく茗荷1個を薄切りにして加えている自分がいる。


   今夜はゆで塩豚と茗荷とキュウリの辣油(らーゆ)和えのつもりだったが、液状の辣油がないことに、作り出してから気づいた。
   そこで馬路村のポン酢に辣油の粒を加え、キュウリと茗荷を合えて5分ほど置く。3日前に塩をまぶして冷蔵庫に入れておいた薄切り豚バラ肉をさっと茹で、すこし冷ましてから和えてみる。


   肉も柔らかく、塩味がいい旨味になってくれていて上出来。茗荷のほろ苦さが、ピリ辛なポン酢ベースに、いい奥行きを与えている。冷しゃぶよりワンランク上やな。
   もちろん、バラ肉の茹で汁は、黒コショウと塩少々を加えてスープにしてゴックン。これからやってくる夏、食欲が落ちたときにはこの一皿がいいかも。苦みばしった男には生涯なれそうもないが、茗荷の苦みが楽しめるようになったことは、少し誇らしい。