シャンパンタイム〜矢野顕子&YUKI(zeep divercity tokyo)


「林檎っこの気持ちは よ〜ぐ わ〜がる  林檎っこ めんごぃや めんごぃや 林檎っこ~♪」


 YUKIが舞台に登場して、矢野さんの伴奏でいきなりこの曲を歌い始めたときは、青森育ちの矢野さんへの少しヒネッたオマージュかと思ったが、ちがった。YUKIは函館育ちで、小学校時代の修学旅行先が青森だったらしく、その旅行時のバスガイドが津軽弁で歌ったこの『リンゴの唄』だったという。


 矢野さんの40周年の「ふたりでジャンボリー」というコラボ企画第?弾の昨夜のゲストが彼女だった。40周年ともなると、ときに矢野さんは傍若無人で「YUKIちゃん、かわいい〜」という声が何度も客席からかかると、「ふぅ〜〜〜ん」のひと言で恫喝してみせて、笑いをとったりされていました(苦笑)。


 YUKIの唄は初めて生で聴いたが、とても伸びやかでうつくしい。時おり母親のようにたくましく、時にガールフレンドみたいにやさしくて、心臓の隅を指でつねられたようにせつない。生と死がきちんと描かれた彼女の代表曲『JOY』が昨夜唯一のアンコール曲だった。


 お台場からバスと地下鉄で自宅に戻ると、業界の先輩の方からの喪中ハガキで、自分より2歳上の奥様が亡くなられたことを知る。とにかくメールを送ろうと書き出してすぐにふさわしい言葉がどうにも見つからずにキーボードのうえで手が止まってしまった、いったい、何の商売してんだろう、いい歳して、うんざりするほどダサいなオレ。
   

 いや、だからこそいっそう2人の演奏のように、シャンパンの泡みたいにきらめいていてそのくせ、あっと言う間に消えさってしまう儚(はかな)いものに手をきちんと伸ばそうと思う。