俳句の向こう側へ 〜最果タヒ『夜空はいつでも最高密度の青色だ』(リトルモア刊)

夜空はいつでも最高密度の青色だ

夜空はいつでも最高密度の青色だ


 わりと引きは強いほうだ、と思う。面白い本やCD、気になる取材候補先とか。ひさしぶりに、その引きの強さを実感させてくれた1冊。「最果」と書いて「さいはて」と読むから「さいはてたひ」。


「都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ」


「きみが、あの子をかわいいという根拠が、ただの劣等感であればいいのに」


「きみはきみの涙がちゃんと腐るということを知っているのか」


 ページをめくるたびに、意外な言葉(つぶて)がびゅんびゅん飛んできてうまくよけられず、まるで手裏剣にシャツやズボンの端っこを留められたダサいヤツみたいに、たちまち身動きがとれなくなる苛立ちと心地よさにつつまれる。


 磁石のN極同士が反発しあう手応えとか、電線と電線がショートする際に散る火花やビリッとくる感触、ある種の金属を爪でひっかくときに生まれる背筋がぞっとする音とかを思い出させてもくれる。


そこにいるだけでいいって愛しているって、コピーペーストみたいな言葉で心臓を守ってる 信号も人も無視して走り抜けたら、死ぬだけの交差点

 生きるのってなんだか飼い犬みたいだね
 ここは渋谷 きみのこと嫌いになってあげようかって言えるぐらい かわいくなきゃ殺される場所 夢の街


 渋谷の詩