自己肯定感を取り戻す(1) 〜 読売新聞8月28日朝刊の広告

 きっかけはおよそ3年前の新聞記事のスクラップだった。
ふと思いついて去年の10月頃に昔のクリアファイルを見返していて、目に留まったのは白いブラウスで両手のひらをこちらに向けて微笑む女性の大きな写真が掲載された東京新聞の記事。柴田久美子・一般社団法人日本看取り士会会長のインタビュー記事だった。島根県の離島のグループホームで、終末期の高齢者を抱きしめて看取るに至る彼女の軌跡が紹介されていた。


 私の母は6年前の東日本大震災の4日前に急逝しているから、その3年前にピンときてもおかしくなかったが、そのときは切り抜いたままだった。が、去年の10月に再びその記事を見たときは、思わず企画書を書いていた。月刊誌での取材が決まり、鳥取の温泉地に取材で出かけたのが去年の11月。体内体感と言って、自分の両親との関わりを親の立場で振り返り、時代を区切って自分がしてもらったことと、して返したことを丁寧に振り返るということに2泊3日で取り組んだ。
 そのときに初めてお会いした柴田さんは、身長150 cm・体重40kgと写真の印象とは違ってとても小柄な方だったが、その口角がきれいに上がる笑顔は同じだった。


 体内体感の体験は今回の拙著でも少し紹介したが、ネットも携帯電話もテレビも一切遮断して、ただ親との関わりだけを集中して思い返すという独特な時間だった。例えば、子供の頃に半ズボン姿で一人写っている写真の記憶でも、親の立場で振り返ると、そこには当然撮影している父親と、その側で微笑みながら佇んでいただろう母親の存在に思い至る。それまで考えもしなかった家族のほがらかで温かな時間が、そのひとりぼっちの写真から浮かび上がってきた(つづく)。