汲めども尽きぬもの

 31周年目のバンドの新曲とは思えない、エレカシの『Easy Go』。前例踏襲をきっぱりと拒む猛々しさに、ブラウン管を通して気圧される自分がいた。NHK-BSの『The Covers』で初めて聴いた。カッチョイイ〜〜。


 表現っていうのはなぁ、オメェ、こういうことなんだよ。


 ボーカル担当の宮本浩次からじかにそう叱咤されている気がした。汲めども尽きないものがそこにほとばしっていたから。


 エレカシのHPを見ると、ちょうど来月の日比谷野外音楽堂のライブ予約が、週末に予定されていることを知る。2日後に予約を申し込む。第1志望の指定席のみ、1点突破できなければ縁がなかったことと割り切る。
 テレビで何かを感じて、予約するまでの心のフットワークが自分で確認できただけでじゅうぶん。心が動かなくなったら、今の商売は続けられない。


 今から20年以上前、同じ日比谷野音エレカシを観た。友達2人を連れてのライブだったが、まだブレイクする前のバンドの客席は、ほぼ大半がヤローだらけ。その後、『今宵の月のように』でブレイク後、知人からチケットを譲ってもらってライブに出かけた時は、女子中高生に囲まれて浦島太郎みたいな気持ちにさせられた。世の中はそんな「ウサギとカメの物語」を消費しながら更新されていく。


 日比谷夜音での宮本は、アンコールを求める野太い声も拒絶してステージには2度と現れなかった。当時好きだったのはアルバム『生活』に収められた『偶成』。 Youtubeで探したけど見つからなかった。夜音からの帰り道に左斜め前を歩く10代のやせっぽちな少年が、連れの子にふと漏らした言葉は今でも忘れない。「宮本、戦ってるよな」。