共感できないからこそ、理解しようと思考する〜「今、何かを表そうとしている10人の日本と韓国の若手対談」(クオン)


 

 日本で韓国文学を出版するクオンによる、日韓文化人対談集がとても読み応えがある。本質的な部分で共鳴と共感があり、同じ時代に何かを表現する人たちの吐息と熱が行間の隅々に息づいている。韓国の映画や文学、建築や写真などを日本人との対談を通して発信しようという姿勢もシンプルでいい。


 とりわけハッとさせられたのは、浅井リョウの「私がいただいて最も悲しい感想は『共感できなくて、つまらなかったです」という着眼点。浅井は「私は共感できない本に出会うと、自分の輪郭が少し変わった気がしてうれしいんです」と続けた。


「自分の知らない考え、まだ辿りついていない何かがある気がして、もっと読んだり、知りたくなったりしますから。『共感できない』と思ってそこで本を読むのをやめてしまうと、自分の形が一切変わらないまま年齢を重ねてしまうんじゃないかと思っています」


 浅井の指摘に裏の首筋あたりに嫌な汗をかいている人は、けっして私だけではないはずだ。「共感できるか、できないか」の不毛な二項対立を超えていくために必要なことは、「共感できないからこそ、理解しよと思考すること」だと朝井は指摘している。


 一見正しそうな意見など、ちょっとググれば小学生にも検索できてしまう今だからこそ、そこで自力で考えようとしないと死ぬまで他人の考えをつまみ食いしながら老ぼれていくしかない、と。

今、何かを表そうとしている10人の日本と韓国の若手対談 (日韓同時代人の対話シリーズ)

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