2012-01-01から1年間の記事一覧

きんぴらごぼう

朝からきんぴらを食べられる幸せだな、ありがとう、知人と下北沢にスープカレーを食べに行くとバタバタしている彼女にそう話しかけると、でも少し固くない?という返事が返ってきた、いやとくには感じないけどね。 文章がだいぶ柔らかくなったね。数日前、先…

「たら」「れば」の残骸

ひとつの白木がまるでカンピョウのようにきれいに削られて1本のバットができあがる過程を、ぼくは静かに見守っていた。職場では「名人」と呼ばれるバット職人のKさんは、そんな若造を気遣っていろんな話をされながらも、手と目だけはリズミカルに動かしつづ…

ノロ・エンプティ

びろうな話で恐縮だが、出張から戻った日の深夜に17年ぶりに嘔吐した。帰りの新幹線内でも悪寒がしてダウンを着込んで、手袋までしてひたすら寝ていた。風邪の初期かなと帰宅後に入浴して身体を温めたのだが、まず下痢が始まった。そして嘔吐。だが発熱はな…

怪人二十面相

小学校の頃、江戸川乱歩の怪人二十面相シリーズをどこに行くにも持ち歩いていた時期がある。小林少年や明智探偵に追われて、ときに郵便ポストや電柱に変身して見事に姿をくらます怪人に心を奪われた。その正体不明の男の変幻自在さにすっかり魅了され、ぼく…

スピードという花と経世済民

Run

これは3時間走れそうだなと、近くのスーパーに駆け込んだ。1時間半ほど走っても余裕があり、あと同じ時間走り切るには給水が必要だと思ったから。ランニングタイツに準備していた500円玉で、ポカリ500mlとチョコがコーティングされたビスケットを買…

鶏生レバーと甘い醤油の相性〜高円寺マルキュウ

◯△鶏(名前をド忘れした)の生レバーに胡麻油をつけて口に入れると、芋焼酎のロックを一飲みして口を固く真一文字に結びたくなる。その内実はともかく、年齢の上では大人になってよかったと思う一品。馬刺はもちろん、はじめて食べた鶏モモ肉の叩きも、南九…

来週17日(月)トークイベント「2013年の幸せな働き方」を都内で18時半から開催予定。残席が若干名あります!

人口減・少子高齢化の国の経済は縮小するしかありません。だから稼ぎに偏った「働く」しか知らない人は、これからどんどん苦しくなる。みんな気づいてるけれど、直視したくないから目をそらしているだけです。選挙の投票に行く人の平均年齢が55歳前後だか…

最高に面白い本大賞ビジネス書部門第9位〜全国のカリスマ書店員180人からの評価に感謝!

月刊誌『一個人』2013年1月増刊号が「2012年度最高に面白い本大賞」という企画を掲載している。副題は、「全国のカリスマ書店員180人が本気で選んだ15部門150冊」。そのビジネス部門第9位で、山田昭男著「ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから…

海の底の龍宮

海の底の景色も陸(おか)の上とおんなじに、春も秋も夏も冬もあっとばい。うちや、きっと海の底には龍宮のあるとおもうとる。夢んごてうつくしかもね。海に飽くちゅうこた、決してなかりよったー。 石牟礼道子著『苦界浄土』第三章、「ゆき女きき書き」のこ…

simple beautiful〜新宿トークイベント

ふいに立ち止まる人を見つけてヤッタァ〜と思い、しばらくして立ち去る人にガックリする、気持ちがそんなアップダウンを盛んにくり返す。紀伊国屋書店新宿南店3階のイベントスペースで、ゲストの丹羽順子さんの話に耳をかたむけながら、ぼくはひそかにそん…

山田昭男著『ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから仕事が面白くなる」(東洋経済新報社8月刊)

大手書店のベストテンランキングにこそ入り切れませんでしたが、私が取材協力したビジネス書が、この出版不況にこつこつ8刷り出来となりました。朝日新聞日曜版の書評欄に紹介されたことも、大きな後押しになりました。 年末のビジネス雑誌の今年のヒット本…

明日、拙著発売記念トークイベント開催(紀伊国屋書店新宿南店3階イベントスペース19時〜19時45分 参加無料)

新宿での打ち合わせの前に、会場の下見に紀伊国屋書店新宿南店に行って来た。JR新宿駅南口改札を出て、甲州街道の横断歩道をわたり、そのまま高島屋タイムズスクエアをぬけていくと、南店3階につながっている。いつのまにか角がタリーズコーヒーになってい…

上には上がいる〜いたばしリバーサイドハーフマラソン

RUN

折り返し地点を回った後の17キロ過ぎ、ペースアップしながら走っていると、きれいなフォームで前を走る白髪の男性が目に留まった。背中を少し丸めて、上体を気持ち左に傾けながらだが上下動のない、つまりは無駄のない走り方。きれいに隆起したふくらはぎを…

弁柄(べんがら)色の祝福

還暦を過ぎたら、身体は老いていくんだけど、内面はむしろどんどん若返るのよ。だからもう60年、つまり私、120歳まで生きちゃうかもしれないわよ。たとえばね、食べ物の好き嫌いが逆転して、子どもの頃に嫌いだったものが近頃ふたたび嫌いになったりと…

2012年の孤高の描き方〜イーユン・リー著『千年の祈り』

千年の祈り (新潮クレスト・ブックス)作者: イーユンリー,Yiyun Li,篠森ゆりこ出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/07/01メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 69回この商品を含むブログ (79件) を見る 従妹との結婚で障害のある子供を授かった夫婦や、一人…

16人のお客さんと『星影の小径』〜「土と平和の祭典」(日比谷公園)

NPOトージバさんのブース隣で、拙著を並べて、昨日の朝から夕方までで16人の方々に買っていただいた。最初の3時間は1冊も売れなくて、どんどん不安はふくらんでいったが、まぁ、最初にしてはまずまずか。いやぁ、誰かにモノを買ってもらうのは大変だなぁと…

「in other words」の粋(いき)

晴天だったので、来月2日のハーフマラソンを見すえて2時間半走に挑戦。1時間50分は切れるはずだから、6.7キロ弱多めの距離。後半少しスピードアップしたら、案の定、残り30分でガス欠状態に。み、みっ、惨め。 夕食後、ひさしぶりにナット・キング…

「囚人」の切れ味 〜 イーユン・リー『黄金の少年、エメラルドの少女』

束の間でも我を忘れられるなら、できるだけ巧妙に、そして甘美にだまされたい。うすのろな日常を生きているからこそ、人は大なり小なりそんな願望を抱えている。恋愛も、詐欺も、そして小説も、それらに手を伸ばす人の心の隙間はとても似ている。そしてイー…

「入れ歯」や「はげ」の魔法〜星野源(NHK「佐野元春のザ・ソングライターズ」)

「こんにちは」や「ありがとう」といった月並みな言葉でこそ、人の心を震わせるために、今まで多くの優れた歌や映画や小説が生まれてきた。 だから、「入れ歯」や「はげ」といった普通は歌にならなそうな言葉を、浮くことのない歌にしたいなぁというところか…

 日・中・韓・朝の狭間を埋めるトーク&コンサート

作家で韓国で出版社を経営する戸田郁子さんから、以下のお知らせが届きましたので、転載します。ご興味がある方はぜひ足をお運びください。2012年11月24日(土)午後6時〜8時半 参加費1500円 さいたま市民会館うらわ コンサート室 (1JR浦和駅西口下…

見えない身体、見えない動き

Run

その店を出てから新たに買ったシューズの入ったケースとカバンを左手に持ちかえ、ぼくはそそくさと歩き出した。爪先に神経を集中し、頭の中では両足を「ハ」の字にするようなイメージで、テンポよく進む。だが、両肩は少し力んでしまい、背中もこころなしか…

わたしたちの、わたしたちによる、わたしたちのための被爆〜 吉見俊哉『夢の原子力』

開沼博『フクシマの正義』でも指摘されているが、「原子力ムラ」と一部の利権保有者たちを悪者扱いして溜飲を下げているだけでは、社会の本質は何も変わらないという視点に、とても共感する。なぜなら、原爆と同じエネルギーを「夢の力」として受け入れ、世…

チーター気分でGO!

Run

日曜日に90分走ったときには終始重たかった同じ身体とは思えない。その3日後の夕方走りに出ると、まるでチーターにでもなったような軽快さで身体が動いた。まっ、チーターにはせせら笑われるだろうけどね。 年齢をかさねて集中力や持続力が落ちていること…

玄米日和

約二週間天日干しした稲束を抱きしめるようにして、軽トラに積み込む。乾燥した稲藁の香ばしい匂い、歩く振動で耳元で鳴るかさかさ音に、田んぼの天地返しにみんなで汗した初春の頃を思い返す。汗と吐息と溜め息と笑い声とが詰まった稲束の手重りする感覚に…

変格活用の歌〜斉藤和義『おつかれさまの国』 

夕方1時間半ほど走ってきて、シャワーを浴びてから、おもむろにストレッチを始めた。ipadの電源を入れて「youtube」で「斎藤和義」と入力し、あれこれ聴きながら、疲労で固くなったふくらはぎや腰をマッサージする。 「いててぇ〜」「あっ、吊りそう」「や…

旋律として、あるいは詩としての輝き〜高橋源一郎著『非常時のことば』

名作『さよなら、ギャングたち』以来、ひさびさに手にした高橋本は、「3・11」を機に言葉を失った高橋さんが、古今東西の非常時に遭遇して書かれた美しい言葉たちを集めた一冊。 文章を読む際、つい意味に重きをおいてしまいがちな読者をよそに、幼き水俣病…

日本、フランスに1対0で敵地で勝利!

コーナーキックは、前半フランス8本で日本0本。この数字がすべてを物語る、一方的なフランスペースながら0対0。後半にはフランスの攻め疲れとメンバー交代で、攻守ともにスペースが生まれて、日本が徐々に攻撃の形を組み立て始める。そしてフランスのコ…

佐藤哲郎プレゼンツ「サケとカメラとロケンロー」(新宿ロフト)

カメラマンの佐藤さんからご招待をいただいて、久しぶりにLIVEハウスに出かけて来た。10、20代が大半で、おじさん、おばさんはちらほらと見かける程度。ステージの幕間に、佐藤さんが撮影している、首相官邸前の反原発デモの画像が映し出されていた。か…

道草ナビゲーション〜植草甚一『ジャズの前衛と黒人たち』(晶文社)

すこし肌寒い朝に目覚めて、どっかりとソファーに座り込む。終日の雨模様に、手持ち無沙汰でリビングテーブル前の本を手に取る。先日、打ち合わせからの帰りに自宅最寄り駅を通り過ぎ、二駅先で降りてぶらぶらしていて見つけた、ジャズ評論の故・植草甚一さ…

9月16日(日曜日)付け朝日新聞読書欄掲載の書評

世の中全体が騙し絵っぽくなってきたから、一見非常識そうだったり、絵空事にも見える表現にスポットライトが当たりやすくなっているのだとしたら、今の世の中もまんざら悪くはない。 読みにくい人はデジタル版をご参照ください。