視点

アーサー・ビナードさん「日本語は消滅に向かっている」(毎日新聞)

くだらない政治パフォーマンスを「広告」と呼び、平成の嘘つき男を「チェーン店の店長」と蹴散らし、母国語もまともに喋れない子供たちに英語を押し付ける教育を「愚民政策」と斬って捨てる。インタビュー記事「日本語は消滅に向かっている」。そこらの日本…

「弱さ」という灯明(作家・高橋源一郎氏 毎日新聞インタビュー記事)

最近、ネットで読んだ中では、この高橋さんの記事が秀逸。世の中の有様をきれいに照らし出してくれている。

自縄自縛のくせ〜東京新聞💘8月15日朝刊8・9面「いとうせいこう・金子兜太対談」

さいたま市の公民館が憲法九条を詠んだ市民の句「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」を掲載拒否したことから、対談が始まる。 いとうがまず指摘する。「こういう自粛という形で、権力が上から高圧的にではなく、役人が下から自分たちで監視社会みたいにして、…

うまくならない、という意思〜スガシカオ「アストライド」

どんなにヘタクソでも何年もやっていれば、程度の差こそあれ、誰でもそこそこうまくなる。それで「エヘヘッ」とおもう人と、「何だかなぁ・・・・・・」とおもう人にたぶん分かれる。 昔、ぼくが2年ほどつづけた華道「草月流」でも、初級レベルで基本形と呼…

合唱マジック〜NHK-BS1「ギャレス・マローンの職場で歌おう」

合唱で仕事がおもしろくなる? 職場がたのしくなる? たぶん、そんなこと誰も信じないだろう。だが、この番組を見れば、合唱のマジックパワーを疑う人は急減するはずだ。イギリスでもっとも忙しい4つの職場で、合唱コンクールへの参加希望者を募り、ギャレ…

「絆」のアキレス腱〜山田太一脚本TVドラマ『時は立ちどまらない』

さんざん物語られ尽くしたかにも見える東日本大震災。それを被災地にいて、まったく被災しなかった家族に視点をおいて描くという着想がまず秀逸。被災した家族との時にぎくしゃくとしてきしみ、また、時にひりひりする感情のぶつかり合いと、吐き出すあての…

ノロ・エンプティ

びろうな話で恐縮だが、出張から戻った日の深夜に17年ぶりに嘔吐した。帰りの新幹線内でも悪寒がしてダウンを着込んで、手袋までしてひたすら寝ていた。風邪の初期かなと帰宅後に入浴して身体を温めたのだが、まず下痢が始まった。そして嘔吐。だが発熱はな…

しあわせとふしあわせのあいだに咲く花

「この田舎を、何時間も何時間も歩き回った者は、ここには果てしない土地、麦かヒイスの生えた土地と果てしない空の他には、実際、何もないのだという感じを抱く。馬も人間も蚤のように小さい」 牧師になる夢も、子持ちの娼婦と暮らしつづけることもかなわな…

撤退が苦手な日本人(2)ー 15日放送NHKスペシャル「終戦・なぜ早く決められなかったのか」

従来、第二次大戦時のヤルタ会談直前まで、ソ連の連合国側への参戦を日本政府は知らなかったというのが、定説とされていた。それを覆す資料が、英国の公文書館から見つかったという事実から、番組が始まる。 結論から書けば、前日の拙ブログとのシンクロニシ…

撤退が苦手な日本人ー東京新聞💘(ラブ)8月15日付け「戦後67年 日本再生の道」作家・澤地久枝さんと脱原発デモ仕掛人・松本哉(はじめ)さんの対談記事

8月15日の「日本再生の道」をテーマにした対談に、澤地さんと松本さんをセッティングするところに、東京新聞の嗅覚とセンスを感じる。 詳細はぜひ読んでいただきたいが、第二次大戦後に棄民体験をもつ澤地さんが、戦後、「一億総懺悔」というキャッチフレ…

谷川俊太郎VS毛利衛〜ことばが現実に蓋をする

今度、お台場の日本科学未来館「世界のおわりのものがたり」展に行こうと思って、同HPを見ていたら、同館のプラネタリウムの制作にかかわった谷川さんと毛利さんの対談がアップされていた。 言葉が物事を規定することで隠してしまう「現実」をふまえ、それを…

池田晶子著『死とは何か さて死んだのは誰なのか』(毎日新聞社刊)

王様は裸だ!――そう口走る少年や少女の登場は今も昔も痛快だ。たとえば、故・池田晶子はこんなふうに斬り込む。 臓器移植法は「臓器移植する場合に限り、脳死は人の死」と決めました。同じ脳死の人でも、臓器を提供する人は死んでいて、提供しない人は生きて…

坂本義和「3・11と日米開戦70年」(東京新聞12月8日付け朝刊11面)

「福島第一原発事故でも『原子力ムラ』という言葉が使われています。ムラは集団です。だから事故が誰の責任なのか分からなくなる。また分からなくするのです。決定権をもつ者の責任を問わない民主主義はあり得ません」 国際政治学者・坂本義和さん(84歳)の…

長田弘著『すべてきみに宛てた手紙』(晶文社)

作家として立つ前の白洲正子さんが、骨董鑑賞の師だった青山二郎に、自分の書いた文章を見せたところ、青山が「これは君の一番言いたいことだな」と言いながら、そこに線を引いては添削していった、という逸話が思い出された。 手紙の文体でつづられた長田弘…

小泉今日子の「複雑」

ひょいっと駅で抜き取ったタブロイド紙に、小泉今日子のインタヴューが載っていて、読みすすむうちに次の箇所で止まってしまった。 子役って泣くのがうまい子が多いけどなぜかなって、先日、古田新太さんに話したんです。そしたら古田さんが『子どもはまだ感…

原発事故と水俣病

8日付けの東京新聞朝刊の「こちら特報部」面。水俣病の発見と治療に尽力した原田正純医師へのインタビュー記事が掲載されている。 原発事故も水俣病も根幹には、「豊かな暮しを支える技術革新のプラス部分だけを求め、マイナスを社会的弱者に押しつける」と…

40歳以上の日本人男性はいらない

日経ビジネスオンラインで、こんな表題の記事を見つけた。大型SCを展開する企業の人事担当者の率直な話をもとにまとめられている。ああ、やっぱり、そっちだよなぁと思う。近頃の円高と、高齢化と少子化の同時進行、そして構造的な不景気を考えたら、大企業…

東福寺方丈庭園の北斗七星

10日の霊雲院につづいて、方丈庭園についても書いておきたい。霊源院が雲と川を同じ平面に共存させたとすれば、北斗七星を庭に取り込んでみせたのが方丈庭園の東庭。 しかも昔、東司(トイレ)として使われていた柱石をリユースして、その長さに長短をつけ…

NHK「爆問学問」ホスピス医師・徳永進

ガンに冒された人の多くは、そんなガンになる臓器なんていらなかったとこぼすんですよと、徳永さんはいう。だが、その臓器によって、その人が生かされてきたこともまた事実なんですよね、と彼はつづける。 また、死期が近づいた患者さんから教えられることが…

89歳の彼女の日常

その皺の寄った手でニンジンやゴボウを器用に刻みながら、さあ、皆さんも椅子に腰掛けて、と視線をあげて私たちをうながす。ああっ、手元をちゃんと見ないと危ないですよ、と私は思わず声をあげてしまった。 だが、それは杞憂にすぎない。89歳の彼女はすこ…

NHKスペシャル「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」第1回 ”外交敗戦”孤立への道

現実を見誤った楽観主義と場当たり的対応、そして相反する動きをコントロールできない統率力の欠落――それは昔も今も、政府や企業をふくめた日本人の集団の多くが、性こりもなく繰り返している失敗の3大要因かもしれない。いや、とくに日本人とくくる必要は…

「中国はグローバル資本主義に組み込まれているから、そのルールをラディカルに破ることは自殺行為」(「ウォール・ストリート・ジャーナル紙」HPから)

いつもながら、ひとつの点やある事象だけを見て騒ぎだすマスコミがいて、その報道によって多くの人達が好き嫌いという感情をふくらませ、世論調査がそれを増幅し、まるで「正義」のように扱われてしまう。 それじゃあ、理由もなく「狼が来たぞ!」と何度も口…

斉藤学さんの洞察〜東京新聞♡♥(ラブ)

「無菌を求める不潔」 今年6月30日付け東京新聞、その25面の記事の中身出しだ。精神科医・斎藤学さんが、大相撲の賭博疑惑について書いている。 大まかな論旨は、歌舞伎同様に「興行」である相撲は、そもそも堅気ではない人たちが、生計を建てるための…

故・井上ひさし氏の座右の銘(❤東京新聞4月12日夕刊)

むずかしいことをやさしく、 やさしいことをふかく、 ふかいことをゆかいに、 ゆかいなことをまじめに書く(作家・阿刀田高氏の追悼記事より引用抜粋)

佐藤可士和さんの慧眼(けいがん)

まさに今年、いろんなことが急激に変わりましたよね。若い人はすでに出来上がっていた日常を壊していく。車も酒も要らない。貧しくても良いと考える。社会から生活を見るのではなく、生活から社会を見下ろす視点です。 あるニュースレターで目がとまった佐藤…

心で書く文章 頭で書く文章(広島にて)

あるピアノに寄せられた感想文を読んだ。 くわしいことは書けないが、小学生1年生から6年生、さらには中学生と保護者までの文章があった。 一番すごかったのは小学校1年生のもので、自分がピアノの立場になって、ある事件を懸命に想像し、その悲劇の痛み…

なんともたよりなき健康観(山口にて)

動かない左足を引きずるように去っていく。 70代の彼女の背中を見ながら、ぼくは圧倒されていた。 「ええ、脳梗塞になって、ほんとによかったわ」 清澄な笑顔をうかべて彼女はそう言った。 彼女の弱さは、ある失望と開き直り、そして日常のこと細かな創意…

東京新聞❤(ラブ)対談記事「戦後64年 平和への忘れもの」

15日の続きです。 安田 飯田さんの話をお聞きしながら、日本の兵士たちもチェスの駒のように死んでいったのではないかと思いました。ただ戦争を経験していない私が、彼らの声をどこまで伝えることができるのかと、私自身に対する不満はありました。イラク…

東京新聞❤(ラブ)〜86歳の元BC級戦犯VS22歳のフォトジャーナリスト対談「戦後64年・平和への忘れ物」(8月15日付特集20・21面)

新聞記事を読みながら、こんなに何度も唸(うな)ったのはひさしぶり。たとえば、対談の中盤にこんなやりとりがある。ちなみに飯田さんが元BC級戦犯で、安田さんが上智大4年生のフォトジャーナリスト。 安田 飯田さんの世代はひとつの統一された思想を共…

仕事で自分をつくる人

ひょんなご縁から、高度成長期にご活躍された元銀行家の方のお話を伺っている。これがおもしろい。既成概念を嫌い、オンリーワンな仕事への嗅覚が鋭い一方、融資の際には、自分なりの方法論で考えうるかぎりの慎重を期す。仕事の入口と出口の振れ幅が大きい…