視点

かんたんなようでむずかしいこと

以前、書家である熊谷守一の書で、ハッとさせられたものがある。 「上手は下手の見本なり 下手は上手の見本なり」 あるトップセールスの方とお会いするために、目黒の都ホテルに出かけた。佐野元春さんの取材で訪れて以来、10数年ぶり。正面玄関すぐの1階…

『CUT』6月号 宇多田ヒカル3万字インタヴュー(2)

歌でも小説でも映画でも、なんでもいい。 その表現が、いったい、どういう場所から生まれてきているのか。その源(みなもと)の在り方が、その表現の深さや広がりを決める。そのことをあらためて痛感させられる。 インタヴューの中で、渋谷陽一は、宇多田の…

中村俊輔の視野

朝から、いや6月のスタートから幸先がいい。 偶然、たどりついた「朝日新聞グローブ」WEBの中村俊輔の記事が面白い。今より大きな視野や深い洞察力をつかむには、いったい、何が必要か。あるいは、どんなアプローチがあるのか。その職種にかかわらず、そ…

寄せ植えの教え

かつて「芸能人は歯が命」というテレビCMがあった。 それにならえば、今年の賀状にも書いたのだけれど、「植物は根が命」。外出先で見つけた小さな葉ものが、けっこう育ってきたので大きな鉢に移したり、寄せ植えにする。 写真右側のクッカバラは南米産。…

俳優・水谷豊の感性

「むしろ演技中より、撮影の合間に何気なくしゃべっているときのほうが、『この人、演技してるんじゃないかな』って思うことありますもん」 今夜のテレビで、水谷豊が同じ俳優の岸部一徳との対談で、そんなことを口にした。彼は同じ番組に出ている俳優たちと…

ある漫画家の昼飯

先日、テレビで漫画家いがらしみきおの密着取材をしていた。人気漫画「ぼのぼの」の作者だ。 彼の生い立ちなども紹介していたのだけれど、もっとも印象的だったのは彼の昼食のとり方。近所ではなく、わざわざ地下鉄に乗って数駅先で降りてすぐの立ち食い蕎麦…

国際ワ―クキャンプの可能性

今日、ひさしぶりに都内で行われた国際ワ―クキャンプ・セミナ―に参加。 同キャンプとは、中国や韓国のハンセン病回復者が暮らす村で、主に日本と韓国の学生から会社員までが参加して行われる、FIWC国際労働キャンプのこと。 ぼくが学生時代に参加した頃…

福岡伸一・大竹昭子さんトークショー(青山ブックセンター本店)

福岡さんが、以前から作家・大竹昭子さんのファンで、それゆえに実現したトークショー。大竹さんの著書『須賀敦子のヴェネチア』をガイドブックに、福岡さんはヴェネチアを歩いたらしい。ロマンチック! 須賀さんといえば、ぼくにとっては『トリエステの坂道…

日興証子の運命やいかに!

金融業界の一部で流行っているブログを、友人が教えてくれた。 タイトルは、「三菱と日興 愛と憎しみの物語」。男女関係になぞらえている分、門外漢が読んでも、わかりやすくて面白い。この話を頭に入れておけば、今後の金融業界の動きをかなり楽しめるはず。…

寺島実郎さんの、違和感のじつに柔軟なひっくり返し方〜日経ビジネスオンライン

はぁ〜〜〜。 フレキシビリティって、きっと、こういうことを言うんやろうなぁと、ため息がもれた。 日経ビジネスオンラインの伊東乾「常識の源流探訪」。 寺島実郎さんをゲストに迎えた、<オバマ「グリーン政策」は「IT革命」を超えるか>が面白い。 対…

心で書く文章 頭で書く文章(広島にて)

宮崎駿さんがいわれる「子供のすごさ」とは、このことか。 あるピアノに寄せられた感想文を読んだ。 くわしいことは書けないが、小学生1年生から6年生、さらには中学生と保護者までの文章があった。 一番すごかったのは小学校1年生のもので、自分がピアノ…

強迫観念が社会の原動力

宗教人類学者の植嶋啓司さんの「強迫観念が社会の原動力」という視点が、おもしろい。「日経ビジネス・エクスプレス」の「ストレス革命」特集の「何も選ばない生き方のすすめ」のインタヴュー。それに気づくと、たしかに肩の力は少しぬける気がする。 オブセ…

言葉の磨きかた

「人生の役割をきちんと知って、生きてる人間は美しいのよ」 今日、取材相手から聞いた言葉。ファッション評論家のピーコさんから、彼女が言われたらしい。その「美しい」の使い方が斬新で、一瞬、ぼくも言葉を失ってしまった。心地いい驚きで、仕事冥利につ…

やっぱり、顔は大事

まるで深い川底で長年洗われつづけた、優しい丸みをおびた石のような顔。 今年78歳になる彼の、なんとも愛らしい笑顔と向き合いながら、芋焼酎のお湯割りも手伝ってか、ぼくはうっとりしてしまった。 「まだ息子が亡くなったとは思えないんですよ、ほんと…

知的能力と実現能力 

先日、ある大学教授の方とお会いした。 「伝説のエンジニア」という異名もとった彼の話の中で、もっとも印象的だったのが、知的能力(アビリティ)と実現能力(コンピタンス)についての件(くだり)。 かつての勤務先で、東大の機械科大学院卒の若手に、ひ…

ことばウオッチ〜より強靭なリアリティの在り処

永作博美さんが対談番組に出ていて、「その役を守ってあげられるのは私だけだから」と口にした。極端な役柄に、人間らしさを吹き込む想いを語った言葉。 ぼくの書く言葉は、と考えてみる。それは往々にして登場人物たちに近寄りすぎる。もっと突き放すことで…

姜尚中(カン・サンジュン)VS太田の刺激的対話〜NHK「爆笑問題のニッポンの教養」

今夜の『ニッポンの教養』は濃かった。できれば2回連続で放送してほしいぐらい。 姜さんが「(秋葉原事件を起こした)彼はみんなとつながりたかったけど、見ず知らずの人を殺すという形でしか、おそらく、つながれなかったんだと思う」というニュアンスのこ…

北京五輪情報への引きこもり〜愛ラブ❤東京新聞

渋い!思わず、そう唸った。 「朝日、毎日、読売の全国紙三紙の8月15日朝刊一面から『きょう63回目の終戦記念日』の記事がそろって消えていた。紙面のほとんどは、北京オリンピック関連の記事で埋め尽くされていた」 26日東京新聞夕刊11面の匿名記…

広島でのこと(1)〜みっちゃんのお好み焼きソース

偶然、友人が広島取材に出かけていたことを知り、美味しいお店を訊いて教えてもらったのが、お好み焼きの「みっちゃん」。じつに庶民的な名前が気に入った。ちょうど広島駅の新幹線口の食堂街にあったので、肉・卵・うどん入り780円を試しに注文。 酸味が…

自分の仕事に誇りを育む方法

「喧嘩を売られたような気分だよ」 ブラウン管の向こう側で、宮崎駿が怒っていた。それは、映画『崖の上のポニョ』の主人公である男の子のカットを担当するベテラン・アニメーターに向けられてた。男の子のカットの背景を飛ぶ小さな鳥が、少しも飛んでいるよ…

空を見上げるとき、足元を見つめるとき(2)〜肉声のグラマラスさ

一方の伊勢華子さんは、日本の離島をめぐることを続けてこられた。その着想、その行動の積み重ねがすばらしい。この日も、全島民数11人のある島で、小学校を存続させていることを話されていた。エコブームもいいけど、自分たちの足元にももっと見つめなけ…

空を見上げる時、足元を見つめる時(1)〜形容詞以前

以前、「サタカフェ」に出ていただいた伊勢華子さんと西村佳哲さんが、お2人でトークショーをやられると聞き、ヌースフィアのF社長と聞きに行った。話が進むにつれて自分の身体の力みが消え、二人の言葉がストン、ストンと胸の底におちてくる。おだやかな…

自己責任ということ〜400mハードラー為末大という鏡

自己責任という言葉は、この国では否定的な文脈で使われやすい。 「それは自己責任だろっ!」とか「自己責任でやりなさい」とか。その責任を糾弾したり、もう私は知らないから勝手にやってくれ、と放り出す側がよく使う。 それは、「責任」という言葉の本当…

ジャニス・ジョプリンの歌声〜音楽は弱点が武器になる 

ジャニス・ジョプリンの名曲「クライ・ベイビー」。それが海外を放浪中の恋人へ捧げた、彼女のラブソングだったとは知らなかった。しかも二人が誓った、アメリカ大使館を通じての手紙のやり取りと、ネパールでの再会。それがボタンの掛け違いめいたチグハグ…

外柔内剛の人 

この仕事をしている間に、なんとかお会いしたいと思っている人が何人かいる。 幸運にも、その中の一人にお会いして、お話を約2時間近くうかがうことができた。ぼくの想像を超えて、とてもチャーミングな65歳の方だった。 周囲から「名人」と呼ばれる今も…

生きるのに必要な溜(た)め〜東京新聞ラブ❤ 

ようやく風邪が治りかけ、天気もいいので、夕方からゆっくりと6日ぶりの100分ジョグ。先週末と違い、花見客もいなくなった公園で、今頃満開の桜が一本。時おり吹きつける風にその花を散らしていた。ただ、足元をみると、すでに葉桜となった木々の周りの…

生き物のうらおもて 

桜が散る頃、生と死は「うらおもて」という感慨が強くなる。 一斉に咲いて散る様(さま)はむしろ「うら」で、凡庸たる緑葉や枯れ枝の頃こそが「おもて」。漂白の歌人、西行の有名な歌を引用するまでもなく、日本人の遺伝子は、古来からそんな死生観を受けつ…

松岡正剛講演「物語を動かす力が、社会を変える」(六本木ヒルズアカデミー) 

手際のいい料理人の仕事を、目の当たりにするような気がした。 少ししゃがれて、渋みのある低い声で松岡さんは、こう問いかける。「今の社会に『物語』はあると思いますか?伊勢丹と三越が一緒になる、そのどこに『物語』があるんでしょうか?三菱東京UFJ…

NHK総合「爆笑問題のニッポンの教養」〜松岡正剛の「日本のデュアリティ」という着想 

火曜日は、「プロフェッショナル〜仕事の流儀」も面白いけど、「爆笑問題のニッポンの教養」もいい。たいていはどっちか観て、どっちかは録画して翌朝の食事どきに観る。じつはオレって、テレビっ子!? 昨日は、松岡正剛さんがゲスト。「知の巨人」にして、『…

考える脚(3)〜ケーハクな脚こそが近道 

フラメンコの練習から戻った奥さんと、桜見物に近所に出かける。 走るフォームが変わって、普段の歩く姿勢も変わった。今日も奥さんから、姿勢が良くなったとホメられた。以前は、時おり猫背になっているとダメ出しされていたのに。 自分では、速く歩くよう…