2017-01-01から1年間の記事一覧

アーサー・ビナードさん「日本語は消滅に向かっている」(毎日新聞)

くだらない政治パフォーマンスを「広告」と呼び、平成の嘘つき男を「チェーン店の店長」と蹴散らし、母国語もまともに喋れない子供たちに英語を押し付ける教育を「愚民政策」と斬って捨てる。インタビュー記事「日本語は消滅に向かっている」。そこらの日本…

本が勝手に動きだす〜憧れの晶文社と

出かける前に書棚を探す。早川義夫『たましいの場所』、田口ランディ『根をもつこと、翼をもつこと』、古本屋で買ったスタッズ・タケール『アメリカの分裂』。どれも晶文社が発行した本で、それら以外でもたくさん読んできた良書を出す老舗出版社。本好きな…

小さなことからコツコツと拙著紹介

(先週発売号『プレジデント』誌の新刊欄)

ゆるさにぷかぷかゆだねる

JR岡山駅前から後楽園行きのシャトルバスで通り過ぎたときから気になっていた。まだ午前10時半前なのに、駅前から伸びる桃太郎通りぞいにある少し色褪せた赤い暖簾のラーメン屋の前に5人が列を作っていたから。この老舗感満載の外観で、開店の1時間から並…

哀願するミニトマト

「お願い、女優だから顔だけは殴らないで!」 以前、夫から暴力を振るわれてそう哀願した人がいたという話に、ある種の健気なプロ根性を感じたことを思い出した。名前は忘れた。 万願寺唐辛子と獅子唐とともに水をまめにやっていたプランターのミニトマトが…

「不安で自信がない」が正しい 〜佐藤卓トークイベント(9月2日 GINZA SIX・蔦屋書店)

だってミサイルが飛んできて、日本の上空を通過して落ちているわけですよとデザイナーの佐藤卓さんは言った。それでなくても混沌とした時代なのに、さらにそんな状況だから何も不安がないという人のほうが危ないんですよ。そう気づいたら、「不安で自信がな…

自己肯定感を取り戻す(2)〜 8月31日 毎日新聞1面

(前回のつづき) 体内体感とは両親にしてもらったことを振り返ること。やはり思い出をたどると母親との思い出が圧倒的に多い。まだ保育園の頃、通勤するために最寄り駅に向かう母と手をつないで歩いたアスファルト道の光景。小学校1年生で学校のシーソーで…

自己肯定感を取り戻す(1) 〜 読売新聞8月28日朝刊の広告

きっかけはおよそ3年前の新聞記事のスクラップだった。 ふと思いついて去年の10月頃に昔のクリアファイルを見返していて、目に留まったのは白いブラウスで両手のひらをこちらに向けて微笑む女性の大きな写真が掲載された東京新聞の記事。柴田久美子・一般社…

つややかな緑色の流線型

万願寺唐辛子と獅子唐(ししとう)がほぼ似たような、小ぶりな白い花を咲かせるなんて知らなかった。どちらも花が枯れた箇所から大小の艶やかな緑色の実をふくらませることも、プチトマトはその茎も葉っぱからもあの濃厚なトマトの匂いがするなんてことも、…

*[book]不思議な風 〜 本日発売『抱きしめて看取る理由』(ワニブックスPLUS新書) 生きていると、時おり不思議な風に吹かれる。 事前に拙著を献本したNHKの人からも、週刊AERAの人からも「看取り士」という言葉を初めて知ったというメールが来た。そんな状…

アンバランスなバランス 〜 オリヴィエ・ベラミー著・藤本優子訳『マルタ・アルゲリッチ 子供と魔法』(音楽之友社) マルタアルゲリッチ 子供と魔法作者: オリヴィエ・ベラミー,藤本優子出版社/メーカー: 音楽之友社発売日: 2011/05/12メディア: 単行本購入…

「京都慕情」は錆(さび)つかない

夕食どきにテレビを観ていて、エンディングに流れてきた曲にふいに気持ちをさらわれる。普段と代わり映えしない日常に少し細波(さざなみ)が立つ。言葉数が少ないからこそ行間がふくらみ、旋律がシンプルだからこそ深くひびく。武田カオリの透き通った声が…

 はみ出してナンボ 中原一歩著『小林カツ代伝』

私が死んでもレシピは残る 小林カツ代伝作者: 中原一歩出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2017/01/26メディア: 単行本この商品を含むブログ (6件) を見る 具材がはみ出しているサンドイッチが好きだ。盛りだくさんで得した気分になれる。見ただけで目と心の…

ブーメランな言葉〜『潮』5月号「無料学習塾に集う母子家庭の子どもたち」 「半径約50cmの想像力」−それは母子家庭の子供たちを対象とする無料学習塾の運営者が、取材の中で口にした言葉だ。不躾な質問で恐縮ですが、と私が前置きをして、離婚するのは親個…

この映画を日本人が笑えない理由 (オリバー・ストーン監督『スノーデン』) 思わず息をのむ。ルービックキューブがきれいな放物線を描く一瞬に、この映画(エンターティメント)が凝縮されているからだ。 オリバー・ストーン監督が自らあの男に会いに何度もモ…