2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

本棚整理

ああ、これ、いい本だったなぁとは思うのだが、具体的にどこが、どうよかったのかが思い出せない。情けないのだけれど、そんな本が意外と多いことに気づいた。仕事部屋の大掃除で最初に手をつけた本棚でのこと。 たとえば、詩人・長田弘著『一人称で語る権利…

「エッシャーに魅せられた男たち」(2)

もうひとつ、この本でハッとさせられたのが、あとがきの部分。筆者の野地さんが立ち寄ったニューヨーク近代美術館で出会した光景だ。美術の先生が20人ほどの子供たちに教えていた絵画の鑑賞法。 「さあ、ひとりずつ絵の前に立って。キャンバスから十センチ…

野地秩嘉著『エッシャーに魅せられた男たち』(光文社知恵の森文庫)

何かにたぶらかされる人間を描いてみたい。40代に入った頃から、漠然とそんな夢をもつようになった。きわめて常識的な人たちから見たら、そんなものに、なぜ、そんな時間や大金を費やしたの?といった類の人たちのこと。だから、吉祥寺のビレッジバンガード…

NHKプロフェッショナル仕事の流儀

TV

「本当の強さって、本当のやさしさってことだと思うんです。だから12R戦った相手を心から称(たた)えられない人間は、本当に強いとはいえない」 けっして正確ではないが、そんなニュアンスのことをボクシングで2階級制覇を果たした長谷川穂積選手が口に…

積極的休養の副産物

あれれっ。休憩時間をへて泳ぎ始めたら、自分のイメージ以上に水面をすううっと滑るように進んだ。両手をまっすぐ伸ばして顔を水面に潜らせるとき、顔を水面より35度から40度下げる程度で平泳ぎをはじめたときだった。なにより泳ぎが軽い。そのときはじ…

生涯いじり飽きない玩具

「会社って何だろうって考えたらですね、結局は自分の心の中にあるもんだなって思ったんです。それは社員たちの心の中にもあるだろうし、わたしの心の中にもあって、それぞれの『会社』は違っていて当たり前でね」 よく日焼けした顔を健やかにほころばせなが…

ロウ・イエ監督『スプリング・フィーバー』(渋谷シネマライズ)

「この国は変わるスピードが早すぎるね」 上海を車で移動中、上海生まれの63歳の彼はつぶやいた。 その昔、裕福な両親のもとに生まれた彼は、文化大革命で境遇が激変。フランス料理店のボーイとして働いていた頃の収入は、お客からもらうチップもふくめて…

や、やっちまった

RUN

早朝7時すぎ新宿発の小田急線急行列車にすわり、やにわに大会要項を取りだしたときだった。「午前8時までにエントリー受け付けは済ませてください」という一文が目に飛び込んできた。急行だと目的とする駅まで70分近くかかり、そこからバスでハーフマラ…

佐野洋子著『シズコさん』(新潮文庫)

最初にのけ反ったのは、冒頭の「私はずっと母さんが嫌いだった」という一文の後ろに、「本当は好きになりたかったんだけれど・・・・・・」という書き手の感情が、はっきりと見てとれたこと。 それは母娘の強い絆ゆえではなく、その一文の後ろに筆者である佐…

昭和56年ラベルの梅酒

飲む際にフッと梅酒の香りがきて、口にふくむと舌を押すどっしりとした重量感がある。飲みこむと紹興酒のような濃くとキレが立ちあがり、後口に梅酒の甘みがふたたび舌の上にすうっと広がる。 昭和56年に漬けた梅酒をいただいた。 1981年だから、約3…