2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

身を粉にして書くこと ~ キャロル・スクレナカ著(星野真理訳)『レイモンド・カーヴァー 作家としての人生』

2冊同時に読み始めて、途中からカーヴァーの評伝しか読めなくなった。もう一冊は、作家の大崎善生さんが書いた、故・SM作家団鬼六の物語『赦す人』(新潮社)。前者のほうが、その筆致が淡々としながら、質量ともにとてもグラマラスで、筆者がいたずらに本…

「Lonely(ひとりぼっち)」と「 Alone(ひとりであること)」〜NHK教育ETV特集「詩人・加島祥造90歳」

63歳の姜尚中が山奥で暮らす90歳の加島を訪ね、その心情をカメラの前で打ち明ける場面があった。おおまかにはこんな内容だった。 20代の息子が自殺した悲しみに混乱してしまわないように、自分はそれ以降、意図的に自らを仕事詰めにすることで、正気を保…

「始末」ということ〜特集「京都に行きたい」(dancyu11月号)

「使い切れなかった野菜や切った後の残ったものを使って、家で簡単においしいお漬物をすぐにつくることができて、始末と楽しみの両方あるのになあ」 京都・錦市場老舗青果店『四寅』の女将さん・堀紀子さんの言葉。今売られている月刊『dancyu』11月号の「極…

飛べない自由〜中村文則『掏摸(すり)』(河出文庫)

米国のクライムノベルかと見まがうような硬質な文体。短く句読点を入れてテンポを高め、読者をぐいぐいと引っぱりこんでしまう腕力に圧倒される。文章に心地よく引きずり回される、マゾヒスティックな感覚をひさしぶりに堪能する。 反社会的な存在である掏摸…