2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

池田晶子著『暮らしの哲学』

「なぜ自分はここに生まれて、あそこに生まれなかったのかということは、考えても、理由がない。理由が見つからない。ということは偶然である。したがって絶対である。この、偶然的なことが絶対的であるという原点に気がついていると、自分の人生に、言って…

世界で最初の読者であること

昨日、有楽町線「銀座一丁目」駅近くの地下一階のルノアールで、3時間超のインタヴューを終えて、地上に出るとすっかり日が暮れていた。少し高揚した気持ちと火照った頬を、冷たい外気で冷ましつつ中央通りを歩きながら、昔、ウルトラセブンの変身メガネが…

「常夜燈」から「ヒミズ」へ(3)

安藤忠雄事務所玄関前の貼り紙にグッときて、このまま東京で帰るのがさらに嫌になった。地下鉄で心斎橋に出た平日午後、ひさしぶりに商店街を道頓堀までぷらぷら歩く。 道頓堀のTUTAYAまで来て、ふいに今年の手帳を物色する気になって立ち寄る。そこで見つけ…

「常夜燈」から「ヒミズ」へ(2)

感想はむずかしい。 答え方ひとつで、相手に自分が見切られてしまう危険性があるからだ。先の安藤事務所から持ち込まれた千枚漬けを一口食べたとき、市販品みたいな味だったが、「安藤事務所」というブランドに負けたのと、こういう老舗はいくら顔見知りとは…

「常夜燈」から「ヒミズ」へ(1)

おもろい続編。 「昨日やったら、もっと具が多かったんですけどねぇ」 誰も聞いていないのに、エビス様顔のおでん屋老店主が、さらにニコニコしながら言う。なんてバカ正直な、というなかれ。これ以上、最強のマーケティングはないからね。この一言は、むし…

上田正樹&有山じゅんじ「おれの借金、全部でなんぼや」

上野駅近くで3時間ほどの取材を終えた夕方、お弁当を買って東京から新幹線へ。新大阪駅から堂島川近くの宿泊先へたどり着くと、オフィス街のど真ん中。このへんの土地勘もあまりないし、東京の下品な醤油色のじゃなくて、昆布だしの透明感のある大阪うどん…

一点の赤み

舞台に上がる前、落語家がその演目をおさらいすることを、「噺(はなし)をさらう」という。マンションのダイニングキッチンの流し台前で、故・立川談志がさらう人情噺「芝浜」がよかった。この年始年末、もっとも印象に残ったテレビ番組の映像。たしかNHKBS…