2010-01-01から1年間の記事一覧

本棚整理

ああ、これ、いい本だったなぁとは思うのだが、具体的にどこが、どうよかったのかが思い出せない。情けないのだけれど、そんな本が意外と多いことに気づいた。仕事部屋の大掃除で最初に手をつけた本棚でのこと。 たとえば、詩人・長田弘著『一人称で語る権利…

「エッシャーに魅せられた男たち」(2)

もうひとつ、この本でハッとさせられたのが、あとがきの部分。筆者の野地さんが立ち寄ったニューヨーク近代美術館で出会した光景だ。美術の先生が20人ほどの子供たちに教えていた絵画の鑑賞法。 「さあ、ひとりずつ絵の前に立って。キャンバスから十センチ…

野地秩嘉著『エッシャーに魅せられた男たち』(光文社知恵の森文庫)

何かにたぶらかされる人間を描いてみたい。40代に入った頃から、漠然とそんな夢をもつようになった。きわめて常識的な人たちから見たら、そんなものに、なぜ、そんな時間や大金を費やしたの?といった類の人たちのこと。だから、吉祥寺のビレッジバンガード…

NHKプロフェッショナル仕事の流儀

TV

「本当の強さって、本当のやさしさってことだと思うんです。だから12R戦った相手を心から称(たた)えられない人間は、本当に強いとはいえない」 けっして正確ではないが、そんなニュアンスのことをボクシングで2階級制覇を果たした長谷川穂積選手が口に…

積極的休養の副産物

あれれっ。休憩時間をへて泳ぎ始めたら、自分のイメージ以上に水面をすううっと滑るように進んだ。両手をまっすぐ伸ばして顔を水面に潜らせるとき、顔を水面より35度から40度下げる程度で平泳ぎをはじめたときだった。なにより泳ぎが軽い。そのときはじ…

生涯いじり飽きない玩具

「会社って何だろうって考えたらですね、結局は自分の心の中にあるもんだなって思ったんです。それは社員たちの心の中にもあるだろうし、わたしの心の中にもあって、それぞれの『会社』は違っていて当たり前でね」 よく日焼けした顔を健やかにほころばせなが…

ロウ・イエ監督『スプリング・フィーバー』(渋谷シネマライズ)

「この国は変わるスピードが早すぎるね」 上海を車で移動中、上海生まれの63歳の彼はつぶやいた。 その昔、裕福な両親のもとに生まれた彼は、文化大革命で境遇が激変。フランス料理店のボーイとして働いていた頃の収入は、お客からもらうチップもふくめて…

や、やっちまった

RUN

早朝7時すぎ新宿発の小田急線急行列車にすわり、やにわに大会要項を取りだしたときだった。「午前8時までにエントリー受け付けは済ませてください」という一文が目に飛び込んできた。急行だと目的とする駅まで70分近くかかり、そこからバスでハーフマラ…

佐野洋子著『シズコさん』(新潮文庫)

最初にのけ反ったのは、冒頭の「私はずっと母さんが嫌いだった」という一文の後ろに、「本当は好きになりたかったんだけれど・・・・・・」という書き手の感情が、はっきりと見てとれたこと。 それは母娘の強い絆ゆえではなく、その一文の後ろに筆者である佐…

昭和56年ラベルの梅酒

飲む際にフッと梅酒の香りがきて、口にふくむと舌を押すどっしりとした重量感がある。飲みこむと紹興酒のような濃くとキレが立ちあがり、後口に梅酒の甘みがふたたび舌の上にすうっと広がる。 昭和56年に漬けた梅酒をいただいた。 1981年だから、約3…

服部文祥「サバイバル登山家」(みすず書房)

先日、紀伊国屋書店で、小さく平積みになっているこの本を見つけて、裏表紙をめくると12刷りだった。いい本はしっかりと読まれていることをうれしく思う。 スーパーで肉を買い、自分の手を汚さないで食べるほうが、ケモノを殺す狩猟者よりよほど野蛮である…

お米の研ぎ水は鉢植えへ

お米の研ぎ水は、栄養価が高いゆえに、生活排水としてそのまま流してしまうと、環境を汚してしまう。 先日、永田さんにお会いした際、そのスタッフの方から聴いた話だ。一部の自治体では、それが極度の悪臭や汚水として問題化しているため、それを流さず、鉢…

立川マスターズ(ハーフマラソン・昭和記念公園)

Run

ドドクンドドクンドドクンッ・・・・・・、仰向けに寝転ぶと、両方のふくらはぎから太腿にかけて、血液がいつにない、はげしいスピードで駆け巡っているのがよくわかる。秋の、少し高い青空を見上げながら、今、ふくらはぎの血管を切れば、噴水みたいな勢い…

永田照喜治さんとの再会

家の軒づたいに這うように伸びる、赤紫色のブーゲンビリアがなつかしかった。季節は11月、場所は沖縄ではなく、静岡県浜松市。約8年ぶりで永田照喜治さん宅を訪れた。水をあまり与えないスパルタ農法で、糖度の高い野菜を育てる永田農法の創始者。かつて…

友部正人「ひとり no media 映像編」(東中野 Space&Cafeポレポレ坐)

虫眼鏡の人――友部さんの朗読詩と歌を聴いて、そんな言葉がうかんだ。つばめや自分の両足、雨の日や自分の影を、彼は彼だけの虫眼鏡を通してじっと目をこらし、その向こう側に世の中の空気や男と女を、あるいは生きることの宙ぶらりんさを見つける。 「中央線…

義をまねることから

「彼が渋るからね、アラカワさんは金儲けしようと言ってるんじゃなくて、あなたの理念や志を本という形にして若い人たちに伝えたい、残したいと言ってるんだよって、そう言っておきましたから。そしたら、まんざらでもないようだったよ」 道路沿いの窓から雨…

高円寺「ブルー・オン・ベルベット」

Bar

「あのぉ、テレビ版『明日のジョー』のシングルB面お願いします」 ちょっと通ぶって入店早々にぼくが言うと、マスターはあっと言う間に、『明日のジョー』関連のシングルレコード11枚を目の前においてくれた。 漫画雑誌掲載時、テレビ放送時、映画公開時…

「競わない生き方」のススメ〜週刊SPA!11月23・30日合併号

ひさびさに「SPA!」で仕事をさせていただきました。4P特集「競わない生き方」のススメ。少子高齢化と不景気のダブルパンチに沈む世の中でキャリアアップを目指すのではなく、転職&減収をへて、自分の性に合った働き方を見つけた「ダウンシフター」た…

山田昭男著『ドケチ道』(東洋経済新報社)

朝日新聞今月14日(日)の書評欄に、わたしが関わった「ドケチ道」の書評が掲載されました。「痛快な経営指南書である」から始まる、とても好意的な文章です。クリックして御覧ください。 これで大手書店の新聞書評欄コーナーで、ふたたび多くの人の目に触…

奥武蔵トレイル17K―来年も出たい大会

Run

はぁはぁ、はぁはぁ、はぁはぁと息を弾ませて山道を走る。 前後のランナーと距離があるらしく、自分の吐息以外は何も聴こえない。森閑とした紅葉の奥武蔵をまるで独り占めしながら駆け抜ける。はぁはぁはぁはぁ、いのち息吹くような心地よき孤独。 はじめて…

服部文祥著「サバイバル登山家」(みすず書房)

サバイバル登山家作者: 服部文祥出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2006/06/20メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 66回この商品を含むブログ (33件) を見る ひさびさにヤバい映像を観た。TBS情熱大陸で、服部が猟銃で仕留めた母鹿をその場でさばき始…

高坂勝著『減速して生きる―ダウンシフターズ』(幻冬舎)

「減速すれば、景色が鮮明に見える。発見もある」 作家・村上龍の推薦文が腰巻におどっている。 過剰消費の最前線でもある大手百貨店を辞めた後、一転して車で移動するキャンプ生活をはじめる。今から10年前の当時、彼はふたつの不安をかかえていた。 サラ…

大人の油揚げ丼(千葉県香取郡「月のとうふ」

ああっ、オレも大人になったなぁと思う瞬間がたまにある。 千葉県香取郡神崎町というところへ、東京から快速エアポート成田空港行きという電車に乗り、成田でさらにのりついで、約2時間半もかかった。その時間だけを考えれば、新幹線で新大阪までいける行程…

納豆とじつによく合う七分精米

ようやっと昨日、近所のお米屋さんで、初収穫した玄米30キロ中12キロを精米してもらった。いかにも善良そうなお米屋さんに相談して、白米9キロ、七分精米3キロにしてもらった。精米は1キロ50円で合計600円。 薄茶色の種皮がついた玄米は、精米す…

ピンチの充実感

フーーッとため息をつきながら、両肩から脱力した。 夜7時半すぎ、上海浦東国際空港が終点の地下鉄2号線「川沙」駅の改札口を出て地上にあがり、その交差点から2方向のバス停を探したが、188番のバス停がなかった。上海市内で取材を終えて、地下鉄を乗…

3日先のことはわからない

なんでアナタは、この不景気に、なおかつ、会社員でもない不安定な社会的身分にもかかわらず、そんな脳天気に笑ってられるの?――あらゆる修飾語をとっぱらって要約すると、長年の友人に先日そう訊かれたことが思い出された。 だって、それが自分にとっては前…

万博はパビリオンに入るまでがイケる

ふと振り返ると、わたしたちが並ぶ列の人がキュウリをかじっていた。まずオジサン1人、よく見ると、その斜め後ろのオバサンも、あれれ、その隣で話し込んでいる30代女性の右手にも食べかけのキュウリ・・・、数えると6人の集団が、万博内の日本産業館へ…

社員寮で食べて、飲んで、踊って

上海浦東国際空港について、上海森松の工場内にある同社員寮に荷物をおき、すぐさま最寄のカルフール百貨店に出かけた。夫婦で出かけた上海初日が、ペルー料理パーティだったため、同社員の方々とその買出しのためだ。 外国に行くと、やっぱりスーパーがおも…

約300キロの脱穀完了!

「う〜ん、だだちゃ豆より、味が濃くておいしいね」 田んぼから戻ってきて、初収穫した地大豆(小糸在来)をさっそく茹でてみた。それを味見した奥さんの一言に、おもわずニンマリ。 だからさぁ、日本には300種類の地大豆があると言われていてさ、戦後、…

篠宮龍三著「ブルーゾーン」(牧野出版)

ブルー・ゾーン作者: 篠宮龍三出版社/メーカー: 牧野出版発売日: 2010/08/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 20回この商品を含むブログ (4件) を見る 以前、テレビで彼のドキュメンタリーを観ていて惹かれた。独特の言葉をもっている人だった。先日も、…