2010-01-01から1年間の記事一覧

「君」と「様」から考える

ブーメラン効果という言葉は、因果応報めいたマイナスのニュアンスで語られることが多い。でも、人によってはそうじゃないこともある。 先日、ある経営者の方と夕食をご一緒した。老舗料理屋の坪庭が見渡せる奥の部屋でいただいた松阪牛も美味しかったが、そ…

「陰影礼賛」展(2)ー意味や権威を押し潰した先

art

思わず、声を出して笑ってしまった。 時代順に、陰や影をテーマにした絵画を見てきた最後がポップアートで、まず、ロイ・リキテンシュタインの「ルームメイト」(1994年作品)が展示されていた。人物の影が「●(ドット)」の大小で描かれていた。 それま…

国立新美術館『陰影礼讃』展(10月18日まで)

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影や陰を起点に絵画や写真や現代美術を観てみる。 その視点のズラし方に心惹かれた。感想から先に書けば、もう一度行きたい、それぐらい刺激的で重厚な展示内容だった。全国の国立美術館の所蔵品から、多彩な展覧会を構成した「陰影礼讃」展のキューレターの…

「中国はグローバル資本主義に組み込まれているから、そのルールをラディカルに破ることは自殺行為」(「ウォール・ストリート・ジャーナル紙」HPから)

いつもながら、ひとつの点やある事象だけを見て騒ぎだすマスコミがいて、その報道によって多くの人達が好き嫌いという感情をふくらませ、世論調査がそれを増幅し、まるで「正義」のように扱われてしまう。 それじゃあ、理由もなく「狼が来たぞ!」と何度も口…

NHK教育「ミュージック・ポートレイト」〜思い出の歌を通して語る「自画像」

TV

姜尚中が「80年代、街のいたるところから聴こえてくるユーミンの歌が、当時の僕はとても嫌いでした。ところが先日、用事があって中央高速を車で走っていたら、ユーミンの『中央フリーウエイ』をふいに口ずさんでいる自分がいたんですよ」と、松任谷正隆に…

最大の敵は「(お金の)苦労をしていないこと」

ふいに、その言葉がぼくの胸に突き刺さった。まるで予想もつかないタイミングで、だ。自分の子供たちにくり返す警句があるんだよと、矢沢永吉が糸井重里を相手にテレビでしゃべっていた。 「おまえたちの最大の敵は、(お金の)苦労をしていないことだ。だか…

稲刈り体験(2)

たかが藁(わら)、されど藁。 刈り取った稲の束を高さをそろえて藁でしばる。竹で組んだおだに稲束をかけて天日干しするためだ。竹は、地元の農家さんと休耕田を借りている僕たちが、月1回、田んぼ周辺の里山を守るために伐採してきたもの。いわば、ゼロ・…

稲刈り体験(1)

左手親指と右手薬指の腹側の、赤い内出血跡がようやく消えた。 そう思ったら、今度は左手中指の爪が赤黒く染まりだした。それらが生まれて初めての稲刈の記憶。 左手親指は、黄金色に育った稲を刈りとろうと、数束をまとめてつかむときに一番力が入っていた…

被爆ピアノin ニューヨーク

朝日新聞に、被爆ピアノの記事が掲載されました。Kさん、発見してお知らせいただき、ありがとうございます。 また、NHKニュースでも、取り上げていただいたようです。重ねて御礼申し上げます。ちなみに、写真のピアノを弾く後姿は、シンガーソングライタ…

マルタン・プロヴォスト監督「セラフィーヌの庭」(岩波ホール)

なんとも不条理だな――昔、ユトリロの展覧会を観終えてそう想った。 貧しさの中で絵を描きつづける中で、彼はあの「白の時代」ともいうべきシュールな風景画を編み出した。ところが、それがあるとき高く評価されて経済的に豊かになり、多彩な色を使いはじめる…

丹沢大山トレイルツアー(神奈川)

run

ひさびさに両太腿の筋肉痛。 フルマラソンを走った翌日のようだ。夕食前、近くのプールで1時間ほど身体を動かして、多少はマシになった。昨日、神奈川県大山を尾根伝いに、約20キロほど走るトレイルランニングの初級者向けツアーに参加した。 山をてくて…

萩上直子監督『トイレット』

萩上監督の静かでたんたんとした画面が好きだ。 登場人物たちも言葉少なで、気のせいか、それぞれが黙って座っていたり、あるいは歩いていたりする場面が目立つ。 その代わり、母親の形見のミシンがひさしぶりに立てる音や、餃子を炒める音、長い沈黙の後で…

斉藤学さんの洞察〜東京新聞♡♥(ラブ)

「無菌を求める不潔」 今年6月30日付け東京新聞、その25面の記事の中身出しだ。精神科医・斎藤学さんが、大相撲の賭博疑惑について書いている。 大まかな論旨は、歌舞伎同様に「興行」である相撲は、そもそも堅気ではない人たちが、生計を建てるための…

奈良美智「Girl meets Boy」(広島市美術館「メモリー/メモリアル 65年目の夏に」展・11月7日まで開催中)

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三頭身ほどの大きな顔の少女の絵が目に留まる。 肩幅は顔の3分の2程度しかない。赤い唇は凹凸のない細長いグミみたいだし、鼻すじや小鼻の代わりに二つの穴だけが描かれた鼻や、右だけが異様に赤く、猫のように大きな目も注意してみると異様なのだけれど、…

しまなみ海道サイクリング(2)

最初はおもしろがって、デジカメで撮影ばかりしていたのだけれど、だんだん怖くなってきた。だって頭上をトラックなどが通ると、自転車&バイク&歩行者道がかなりグラグラとゆれるから。 しまなみ海道とは、広島・尾道市と愛媛県今治市の間にある6つの島を…

しまなみ海道サイクリング(1)

「にいちゃん、よう焼けとんなぁ」 広島・尾道駅前の銭湯で、地元のおじいさんからそう声をかけられた。たしかにノースリーブのシャツ部分だけが白くて、顔、そして両腕は肩あたりから赤黒い。あとは短パンからはみだしていた両太腿の膝までが同じ。わずか3…

『海をわたる被爆ピアノ』出版記念祝賀会(in 広島)

広島市内のホテルで100人をこえる人たちに集まっていただいた。出版社探しが難航した分、一冊になっただけでも喜ばしいことだけれど、これだけの人数の広島の方々に祝っていただけるなんて、光栄なこと。 笑いあり、涙あり、著者である矢川さんらしい気さ…

川田修『かばんはハンカチの上に置きなさい』14刷り決定

自分の気持ちや、自分の環境を何かしら変えたいときに、人は本に手を伸ばす。何かを強く求める気持ちがあるからこそ、本のある一節や一文が、その人の心の純粋でナイーブな場所にふれる。 縁もゆかりもない人同士が、本という紙の束を通して何かを共有する。…

松久氏本、藤井さんの「ビジネス選書&サマリー」で紹介

松久信夫さんの著書が、「週末起業フォーラム」代表の藤井孝一の「ビジネス選書&サマリー」で紹介されている。いくつかの本文抜粋の後、選評がある。 「しかし、本書の本当の魅力は、そうした数々の仕事術そのものでは ありません。アイデアが根ざしている…

稲穂も垂れる8月

黄色に色づくたくましい稲穂にニンマリ、その根元にぎっしり並ぶ雑草(コナギ)にゲンナリ。いのちをみなぎらせる生命力は、だけだけしく照りつける日差しにも敢然と立ち向かっている。 田植え時に、ヒョロッとした10センチの2、3本の苗代は、その背丈は…

NHKテレビ「吉永小百合被爆65年の原爆詩朗読コンサート」

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抗いようのない説得力だった。 原爆で夫と、二人のうち一人の子供を失い、なおかつ、自分自身は結核を発病して、もう一人の子供と会えない境遇に陥った。母子で暮らし始めるのは、息子が高校生になるまで待たなければいけなかった。 うら寂しい病室で、母が…

矢川光則著『海をわたる被爆ピアノ』(講談社)

「あらかわさん、恥ずかしい話ですが、わたしは50歳すぎてからの、この5年間で、すごく成長したと思うとるんですよ」 この言葉にぼくはグッときた。 40代後半の若輩者相手に、恥ずかしい話ですが、という彼の前置きも率直で、カッコよかった。 その矢川…

松久信夫著『出社は月に3日でいい』(東洋経済新報社)

本の「ヘソ」という言葉を時々使う。 その本の核心部分ということ。構成をお手伝いしたぼくにとって、この本の「ヘソ」は第5章、とりわけ最初の「『人間は自分が一番かわいい』がすべての出発点」の項。 喫茶店のカウンターに、松久さんと並んで座ってお話…

緊急プロジェクト◆政策選挙インターネット投票「国民はどんな『政策』を求めているのか」

友人から昨夜おもしろいメールが届いた。 先の参院選挙の各党の公約を、政党名と切り離して並べ、有権者には、まず自分が優先すべきだと考えるテーマを選ばせ、政党名を伏せた各公約から適切だと思われるものを選ばせる、という趣向。政策選挙インターネット…

ぎこちない 梅雨明け空と 百日紅

建築はどこにあるの?7つのインスタレーション(東京国立近代美術館8月8日まで)

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暗い空間に入ると、その天井の中央に小さくて赤い明かりが6列ほど、長さ5mほどまっすぐに並べられて、その光を落としている。そこに薄いベージュ色の布1枚をもって立つ。50センチと25センチ大の布をはためかせたり、投げ上げたりすると、当然、その…

おじさんの林間学校(2)

うれしい気持ちが、じんわりと全身を駆けめぐった。 終日、汗と泥まみれになったぼくらの田んぼの周りを、無数の蛍が舞っていた。学生時代、ほたる祭りで有名だった長野県の辰野町で見て以来の、蛍の群れだった。 トンボや蛇、オタマジャクシにサワガニ、カ…

〜オジサンの「林間学校」(1)

思い切って、畦道(あぜみち)に寝転がってみた。 仰向けになった視線の先で木々の緑が暗く沈み、青空がより明るく見える。力が抜けると、汗まみれの身体が、そよ風により敏感になるのがおもしろい。 7月10日(土)の午後1時半すぎ。長袖シャツがびっし…

サッカーをめぐる言葉(1)〜岡田監督を”詩人”と書く感受性

日本人として悪い気はしない。 だが、おいおい、そりゃあ、どう見てもほめすぎ、いや、もしやパラグアイの回し者で、ほんとは、ほめ殺し? そう思うようなサッカー日本代表への海外メディアの評価 を読むと、耳たぶの裏あたりがこそばゆい。 その記事の中で…

「フランス革命」の使い方

笑ってしまった。 教室で習った言葉がだしぬけに出てきて、その俗っぽい使い方が、なんかとても、ぼくのイメージするフランス人っぽかったから。毒気と冷やかしのバランスが絶妙のアイロニー。 「冷笑的」とはこういうことか、とも思う 良い意味でも悪い意味…