かんたんなようでむずかしいこと
以前、書家である熊谷守一の書で、ハッとさせられたものがある。
「上手は下手の見本なり 下手は上手の見本なり」
あるトップセールスの方とお会いするために、目黒の都ホテルに出かけた。佐野元春さんの取材で訪れて以来、10数年ぶり。正面玄関すぐの1階ラウンジは、以前の閑散とした感じから、いかにも外資系に買収されましたという感じで、ゴージャスかつ広大なリビングルームに様変わりしていた。それでも感慨深い。
その方が、先日、研修会で軽井沢に出かけた際、2日目の講師が、あの「奇跡のリンゴ」で有名な木村秋則さんだったらしい。
もうプレゼンテ―ションの資料はごちゃごちゃだし、話し方もお世辞にも上手いとはいえなかった。それでも日本の食を今変えないとダメになる、だから求められれば、全国各地に出かけていくんだという木村さんの無私の使命感はひしひしと伝わってきて、とても勉強させられました、と彼は言った。
年収1億円クラスのトップセールスたち相手に、何ら臆することなく下手な話術で乗り込み、最後には勉強させたと言わせてしまう木村さんもスゴイけれど、彼の技術ではなく強い信念にこそ感応できる、そのセールスの方もスゴイ。(つづく)
- 作者: 石川拓治,NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」制作班
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