長田弘著『すべてきみに宛てた手紙』(晶文社)

 作家として立つ前の白洲正子さんが、骨董鑑賞の師だった青山二郎に、自分の書いた文章を見せたところ、青山が「これは君の一番言いたいことだな」と言いながら、そこに線を引いては添削していった、という逸話が思い出された。

 
 手紙の文体でつづられた長田弘さんの詩集の「手紙5ー「はじめに・・・・・・」を読んでいたときのこと。

詩は(わたしたちにとっては)語るためのことばではありません。黙るためのことばです。
 大切にしたいのは、世界をじっと黙って見つめることができるような、そのようなことばです。声がことばをもとめ、ひとがことばにじぶんをもとめ、そして、ことばになった声からひとの物語がそだってゆく。
 わたしたちが世界とよびならわしているのは、そのひろがりです。


 高校の頃に出会い、大学から少しずつ読み出して、今も仕事部屋の本棚に数冊ある詩人に、48歳で再会することのうれしさとせつなさとにがみ。

すべてきみに宛てた手紙

すべてきみに宛てた手紙