「絆」のアキレス腱〜山田太一脚本TVドラマ『時は立ちどまらない』


  さんざん物語られ尽くしたかにも見える東日本大震災。それを被災地にいて、まったく被災しなかった家族に視点をおいて描くという着想がまず秀逸。被災した家族との時にぎくしゃくとしてきしみ、また、時にひりひりする感情のぶつかり合いと、吐き出すあてのない憤りとその戸惑いを積み重ねながら物語は進む。


  けっしてきれいごとでは済まない2つの家族の、がつんがつんと音を立てる衝突の先に、寄る辺なきいのち同士の共感がほのかに灯される。79歳脚本家の底知れないパワーを前に泣かされて、笑わされることの痛みと心地よさが、口の中でざらつく。
  震災発生後、全国津々浦々に流布された耳障りのいい「絆」という言葉への、それは山田さんなりの返答だろう。