「ジャブは嫌?」〜原悦子『初恋パンチはストレート』


「ジャブは嫌 初恋パンチはストレート
 わたしのハートはあなたのラブ・セコンド」
 
  女性アイドル歌手みたいな声質で、一節も歌わず、こんな歌詞をひたすら語るレコードに友人Sと顔を見合わせ、ほぼ同時に苦笑した。また、この店でやられてしまった。
  これぞ、「なんちゅう歌詞で、なんちゅう歌やねん!」である。そもそも、ボクシングの基本はジャブでしょう?それを「ジャブは嫌」って、なんで?その謎は歌を最後まで聴いても明かされない。明かされないからなおさら耳に残る。絶妙のキャッチーさだ。


  マスターに誰の、何というタイトルの歌なのかを尋ねると、かつてのアイドル・ピンク女優である原悦子の『初恋パンチはストレート』だという答え。その歌手ならぬ、語り手の意外性もふくめて絶妙のマッチングだった。


  ぼくとSが受けた衝撃をより多くの方々にも、ぜひお伝えしたいと、Youutbeで探したがやはりなかった。楽天でシングルが1380円で販売されていることがわかった。結局、店を後にする直前にも、またかけてもらった。
  ちなみに、Sは「自分が戦う空手の試合で流す!」とまで断言する入れ込みようだった。お〜い、楽天でなら買えるぞぉ。


  場所は、高円寺駅前の昭和歌謡バー
「ブルー・オン・ベルベット」
。60年代から90年代のフォーク、アニメ、アイドル歌謡などをシングルレコードで取り揃えている、伝説のリクエストバーだ。高円寺北口の「まるきゅう」で、絶品もつ鍋や鶏肉のタタキなど、安くておいしい九州料理を堪能した後の2次会だった。


  以前、週刊誌の編集者に初めて連れて来てもらったときは、ぼくがリクエストしたアニメ『明日のジョー』の主題歌をかけてくれた後に、マスターがさりげなく同じく尾藤イサオの『ワルのテーマ』をかけてくれた。サビのリフレイン「オレはワル ワル ワルがなぜ悪い〜」とのダジャレみたいな歌詞に痺(しび)れたのが、この店で受けた最初の衝撃だった。「初恋パンチはストレート」の代わりに、今回はこちらをどうぞ。