NHK「爆問学問」ホスピス医師・徳永進

 ガンに冒された人の多くは、そんなガンになる臓器なんていらなかったとこぼすんですよと、徳永さんはいう。だが、その臓器によって、その人が生かされてきたこともまた事実なんですよね、と彼はつづける。


 また、死期が近づいた患者さんから教えられることがある、とも徳永さんはいう。「道が歩いてみたいです」と話したおばあちゃんの言う道に、徳永さんが付いて行ってみると、それは自宅近くの普通のアスファルト舗装の、スーパーへ向かう道だった。人によってはそれが「自転車に乗りたかった」だったり、「田んぼの土を見てみたい」だったりした。


 どれも当たり前の、何気ない場所やモノやコト。
 同時に、それらはその人の日常や普通を、今まで支えてきてくれた場所やモノやコトでもある。死が、それらの大切さを人に教えるんだと思いますね、と徳永さんは口にした。