中島哲也監督『告白』

「監督の勇気に、わたしも加わりたいと思いました」
 湊かなえ原作の大ヒット小説を、ひたすら陰惨に映画化した作品に主演した、この松たか子の言葉にシビれた。その一言が、この映画の志を語りつくしてもいる。


 自分の愛娘を、みずからが担任する中学校の生徒たちに殺された女性教師による復讐劇。テーマはゆがんだ自己愛だ。サイコスリラー仕立てで映画は展開する。陰々滅々としたストーリーが延々とつづくのだが、そのクドさゆえに、最後は作品をエンターティメントに仕上げている監督の手腕が見事。


 日本人の在り方や、社会が戯画化されて、きちんと織り込まれている点が好きだな。さにありながら、こういうテーマの小説や映画が支持される現象を思うとき、自己愛というマーケットが、この国で予想以上に広がっていることをあらためて痛感させられる。


 同じ週のテレビ「Aスタジオ」で、鶴瓶劇団ひとりを評して「売れる芸人になるには、やさしさと狂気がいるんです」と語っていたことを思い出す。映画監督・中島哲也と、女優・松たか子にも同じことが言える。