植田正治展『写真の作法』〜高さ地上3センチのリアリティー(1)

植田正治写真集:吹き抜ける風 
 ありそうでいて、じつはない。そういうものに人は新しさを感じる。それが、まるでありそうにないものだと、嫌悪感や違和感が強すぎてしまう。そのさじ加減は微妙だ。
 植田正治という名前を知っている人は、「あの、砂丘に家族や人が写ってるモノトーンの写真」というイメージが強いと思う。ぼくも初めて「砂丘シリーズ」を観たときに、とてもモダンでカッコよく感じた。日本のはずなのに日本じゃないようで、ちょっと魔法にかけられた気分だった。
恵比寿の都写真美術館で植田さんの展覧会を観て、1930年代から1990年末までの長いキャリアを持ち、その間、じつに多様な作品を残していたことを知った。

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