金子光晴『異端 金子光晴エッセイコレクション』ちくま文庫


 本との縁(えにし)は恋愛のようだ。
 少し前から内田百輭が気になっていた。あの飄々とした文体が、だ。東京駅周辺で打ち合わせがあり、その後、丸の内側のオアゾに立ち寄った。ちくま文庫内田百輭をどれか買うつもりだった。


 パラパラとめくると、いずれものほほ〜んとした佇まいがあり、これこれ、と思いながら少し迷っていたら、ふいに金子光晴の珍しい三部作が目に入った。百輭の文庫はうちの近所でもシリーズであるが、光晴三部作は初めて見た。さすがオアゾ


 少し迷ったが、結局は光晴三部作『放浪』『異端』『反骨』を持ってレジに向かっていた。まっ、百輭は来年じっくり読みこもうと頭を切り替えていた。その希少性の魅力はもちろんあるが、それだけではない。むしろ、そんな理屈をこえて、強い興味をかき立てられたというしかない。
 

 僕の場合、本選びはどこか自分の欠落を補おうとすることなのかもしれない。