2年越しの夢〜柴又100km(1)

   先週土曜日の午後8時すぎ。河川敷の舗装道路を揺れながら照らす自分のヘッドライトの視界に、「99km」の表示が見えた瞬間、緊張がふいにゆるんで涙腺が熱くなった。
   レースの制限時間は14時間で、午前7時15分にスタートしていたから、まだ1時間以上あった。この時点でふたたび胃痛や嘔吐に襲われても、あるいは脚がつって走れなくなっても、歩いてでも100kmレースを完走できると確信したからだ。


   小雨まじりでスタートした「柴又100K」は、およそ25分後には雨が止み、理想的なコンディションで進んだ。だが、天気予報どおり、昼前から強い日差しに照りつけられて一気に消耗させられた。しかも、それが体力的に一番キツい40km後半から50kmすぎと重なった。
   50km手前の給水所では、うどんを頬張る女性ランナーを尻目に、かろうじてミニトマトを口にし、氷水を柄杓ですくって後頭部にかけてもらう程度で再スタートした直後に、ぼくは嘔吐した。


   脚がつるとアウト。そのことをばかりを気にして、その予防に飲んだばかりのサプリを吐いてしまった。まだ残り半分もあるのに、内臓のトラブルかよと不安になりながら、とにかく歩いて前進することにした。まだ時間はたっぷりある、焦るなと自分に言い聞かせた(つづく)。