『電車男』(新潮社刊)〜おせっかいと絵文字イラストが切り拓いたネット小説の可能性

 わらった、大わらいした、なんども声をたてて笑った。以前から「電車男」という言葉がネットで注目されていることは知っていた。でもまるで興味がなかった。ある新聞記事で読んで、今日読んだ。先月末発売ですでに15万部だという。じ、じつにうらやましい数字だ(^^;)。
 電車内で酔っ払いに殴られた女性を助けようと、勇敢に立ちあがった22歳の営業マンが主人公。女性から彼にお礼のティーカップがとどき、彼はその対応を2ちゃんねるにたずねると、いろいろなアドバイスがよせられる。電話でのデートへの誘い方、デート時の服装、実際のデートのためのコーチングなどなど、おせっかいな男女があれこれアドバイスを送る中で、営業マンが少しずつ変身していく物語だ。
 しかし、だ。冷静に読むと、とりわけ男性陣はみな、デート経験が少なさそうで、そんな彼らのアドバイスがどれほど適切かは、と〜っても疑問がのこる。そ〜いうアバウトさかげんもまたいい。最初はあれこれアドバイスしていたのに、どんどん彼女と営業マンの新密度がますことで、こんどは疎外感をおぼえはじめる男たちとかね。
 営業マン君の恋に一喜一憂する、彼女いない暦が長そうな男たち。女性の立場から親切なアドバイスを送る女たち。そのおせっかいぶりが笑えるし、温かい気持ちにもさせる。恋物語の展開していくテンポや、本人とまわりの喜怒哀楽のコントラストが、アメリカ60年代の人気TV番組『ルーシー・ショウ』みたいに上質なドタバタ・コメディーめいてもいる。それに絵文字のイラストがイイ。笑いをすごく増幅させている。何度も大笑いして、絵文字イラストの威力を思い知らされました。

電車男

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