GripBlog〜市民記者ブログがつかんだ洞察力

 あれこれネットを見ていて、偶然に『GripBlog』を見つけた。自称”元おばちゃんOL”が退職後、一念発起でルポライターになろうと始めたブログ。現在、ブログからの収入はゼロで、貯金を取り崩しながらの生活らしい。彼女の武器は、自分で取材をして書くこと。新聞の一次情報をもとに、あーだこーだ書いてるブログとは、そこが一線を画している。
 その軌跡については、佐々木俊尚さんが『Hot Wired』で彼女へのインタヴュー記事を書かれている。興味がある人は参照してほしい。その記事を読むと、彼女の必死な気持ちがよく伝わってくる。しかも先の総選挙では、市民記者として、社民党の福島代表などにも直接取材していたというから、すごい!
 肝心の『GripBlog』をみると、民主党の前原代表の取材をしたいと、同党広報部に単身乗り込んでいく。常識的に考えれば、「ただの世間知らず」だろうけれど、同党広報部もきちんと対応している。
 今月15日の記事として、テレビのやらせ報道をとりあげ、実際にテレビの報道局の人間にもインタヴューをしている。別途、テレビ局の下請けである外部の制作プロダクションの人への取材へもふくめて、やらせ問題をどこか他人事としてしかとらえていないと指摘。
 さらには、自らにも矛先を向けてこう書いている。

もし、マスメディアに不信感を抱き、変わって欲しいと思う人がいたら、真剣に考えてほしいと、マスメディアへではなく、読者にお願いしたい気持ちです。何が悪いのか、どこをどう改善すればいいのか、本気で考える。本気で考えて議論することでしか、変えられないのではないのかなと思います。私は今回の取材で、相手に考えることを望むのなら、先ず自分が真剣に考えなくてはいけないと学びました。

 取材した結果として、その取材相手だけではなく、そのメディアを創るもう一方の当事者である視聴者(もっといえば社会)をきちんと視野に入れている。これこそがジャーナリストの視点だ。
 しかも、それは単にテレビだけの問題ではなく、「当事者意識の欠落」という、わたしたちの社会の多くの問題の本質に、きちんと突き刺さっていると思う。一点を突破することで、一気にひらけてくる世界があると改めて思う。
 その発見は、どこか手だれになっている僕の背筋も少し伸ばしてくれた。