レスター・ブラウン『エコ・エコノミー』(家の光協会)〜本当の「美しい日本」になるための教科書

レスター・ブラウン エコ・エコノミー 
 簡潔で、現実的で、しかもシンプルな提言の数々。名著である。
 たとえば、森林保護というのは簡単。だが、それはあくまで守る発想の言葉でしかない。ブラウンは、森林が私たちの生活に提供してくれているサービス機能という視点を提供する。保全された森林が、気候調節や洪水防止、土壌保全や養分の貯蔵や循環へ果たしている役割を、「サ―ビス機能」ととらえる。それらは経済の維持システムの基礎的要素だという。
 これは、生態学上は常識なのかもしれないが、ぼくには大きな発見だった。最近ならニューオリンズの大洪水の惨禍をはじめ、世界的に頻発する凶暴な自然災害の数々は、それを裏付けて余りある。しかし現在の経済学では、森林はあくまでそこから搬出される木材価値以上のものではない。その現実の乖離を反映させた市場経済への転換を、ブラウンは説く。

 経済発展を維持するためのカギは、価格に(そういった)生態学的真実を反映させることである。生態学者と経済学者が協力し合って、各種経済活動の生態学的コストを計算することが望まれる。そして、これらのコストを税金のかたちで、財貨・サ―ビスの市場価格に組み入れるべきである。財貨・サ―ビスへの追加的課税は、所得税の引き下げによって埋め合わせることができる。ヨーロッパで導入されているこの「課税シフト」についての争点は、税率ではなく、何に課税するかである。

 彼が提唱する「エコ・エコノミー」の基本的考え方だ。
 森林のような高い価値をもつ資源を、材木のような市場価値の低い用途に使用することは、社会に経済的損失をもたらす。同様に、ガソリンの価格は気候変動のコストを含んでいないので、これも社会に損失をもたらすという視点だ。面白い。
 自動車は一家に2台以上持っている世帯からは、バカ高い二酸化炭素排出税を徴収します―「美しい日本」なんてこっ恥ずかしい公約を平気で掲げる厚顔無恥な、オバハン人気の高い”隠れ”核武装論者の二世首相は、「愛国心」なんて言う前に、せめてそれぐらい言ってみたらどうだろう。