加藤昌治著『アイデア会議』〜やさしくて客観的な視座

アイデア会議 
 まさに細部にこそ神ならぬ、本質は宿ることが、見事に噛み砕かれている一冊。いきなり結論を求める企画会議ではなく、プランナー(とにかく数多くのアイデアを出す人)とディレクター(アイデアを企画にまとめあげる人)の役割分担を明確にした上で、アイデアとその提案者を切り離して、あくまでチ―ムとしていい企画を練り上げるプロセスについて書かれている。
 なかでも、ぼくがハッさせられたのが、アイデアとその提案者を切り離すために、アイデアをカード化して卓上に並べてしまうという発想。往々にして企画会議ではアイデアとその提案者が同一視されて、センスいい悪いが断定されがち。「アイツが言ってるから」という先入観のもとで、アイデアの限界や可能性が歪められてしまう。そう、無意識に排除の論理と結びつきやすい。それを防ぐためにも、このアイデアは些細なことのようで大きな違いを生み出す。個人でも集団でも応用できるノウハウだ。その文章の行間に、加藤さんの人としてのやさしさまでぼくは感じ取ってしまった。
 その加藤さんと、飲食店経営のIさんと、田町ヌースフィアのテーブルを囲んだ。この夜は南アフリカワインを飲みながら、ホウボウのムニエル赤ワインソース(オーガニック・ボジョレーを使ったソースが絶品!)が印象的だった。
 二人は初対面だったのだけれど、もうめちゃくちゃ話は噛みあって面白かった。もう、「マルキド・サドはサスティナブルだ」話から、都内一の美味い立ち食いそば店「とんがらし」情報まで、話題は千変万化しながら尽きることなく盛り上がった。
「労働をどう仕事化するのか、どう自分化するのかってことですよね」
 と加藤さんが言えば、
「ぼくは100冊本読むより、一日お店に立ってお客さんと向き合っている方が世の中がわかるんですよ」
 なんてIさんは話すしさ。それぞれ職種も人生もバラバラなのに、問題意識の水位がとても近いことがわかった。
 こんな刺激的な夕食は、まちがいなく今年一番!そんな二人から、「最近の『スチャラカ』は面白いですねぇ」とホメてもらったから、もうオジサンは嬉しくて嬉しくて・・・・・・。帰宅後、ぼくは録画したテレビ番組みながらウトウトモードだった最中に、二人はちゃっかり御礼メールまで交換し合ってるしさ。いい勉強をさせていただき、ありがとうございました。ペコリ。