博多通信・自家製モツ鍋ウィズ市販麺は焼肉のタレが決め手

rosa412006-12-02

 高校時代、ずいぶん興奮しながら読んだ五木寛之青春の門』。その青春編の舞台、福岡県田川市のある家庭でお話をうかがってから、自家製モツ鍋をご馳走になった。キャベツ1個、もやし一袋、にら二束、それにモツ200g(?)。焼肉のタレを唯一の調味料にして野菜をくたくたになるまで煮込む。
 最初は生のキャベツが鍋からあふれて、その蓋(ふた)がおじさん画家のベレー帽みたいに所在なげに見える。だが10分も強火で煮込めば、鍋と蓋は本来あるべき姿に戻り、焼肉のぴり辛タレと野菜の出すスープとモツのダシが適度に混じりあう。さらに食後の生麺2個が残りのスープを思い切り吸って、絶妙の旨味(うまみ)をまとう。ありていのものが感動的なほどに変化する驚き、それはおっかさんの味というしかなく、胸いっぱい堪能させていただいた。ご馳走様でした。
 鍋の湯気の彼方に、素敵な夕餉(ゆうげ)とビールのほろ酔い加減か、女優・松坂慶子さんがふいに視界をよぎった。冒頭の小説を原作にしたテレビドラマで主人公の母親役だった。色白で麗しい彼女の、筑豊の女性然とした、たくましい艶っぽさにも酔っ払っていた青二才の自分を思い出した。