NHK土曜ドラマ「スロースタート」後編「働く理由」〜かなり内輪話っぽい内容ですが、今日だけはお許しを 

ドラマが終わって、すぐに実家に電話した。
「ああ、後編がよかったなぁ。うまく人間のドラマに作ってはるなぁ」
 父親がそういえば、
「脚本家の人が上手やなぁ。最後の方はグッときたわ」
 と母親がいう。母は昨年、心臓の病気で手術してから体調があまりすぐれないらしく、それが気になっていたから少しホッとした。
「なんにでも、感動することは大切にせんとあかんなぁ」
 そんな母の言葉が胸にしみた。
そう、心をふるわせることを母にも忘れてほしくない。いのちを大切にするとは良きにつけ悪きにつけ、心のふるえをこそ大切にすることだから。
「今ね、書いてる原稿はね、その女の子の名前で出るんだけど、母の手料理が重要なテーマなので、できたらお母さんにもぜひ読んでもらいたいねん。せやから、寝てばっかりおらんと、一日に10分、20分と歩くようにして、また元気になってもらわんんとな」
「はいはい、わかりました。ほんま、近頃口うるさいで。ふふふふっ」
 ちょっと遅くなったけれど、誰よりも両親に喜んでもらえたことがとてもうれしい。フラッと韓国に留学したり、上京してから肉体労働していた時期には心配もさせて、ずいぶん遠回りもしたけれどなんとか間に合った。
 改めて見て、じつに細かなディテールを精緻に積み重ねて作られていることを痛感した。局内の試写会では見落としていたことがとても多かった。たとえば、花壇の花を端正に育てる母と、その花を無意識に自ら踏みつけて、息子に自分が出て行くと告げる母の感情の揺れなど。本当に丁寧なドラマに仕上げていただいていた。
 この場を借りて、脚本家の浅野有生子さん、演出の勝田さん、プロデューサーの遠藤さんに心からお礼申し上げたい。ぼくらが世の中に投げた小さなボールを、とても人間臭く、ゴツゴツとした手重りのする大きなボ―ルにしていただいた。投げ返していただいたボ―ルを糧に、ぼくも少しでも大きなボ―ルを投げ返せるように精進していきます。ありがとうございました。
 なお、ドラマのご感想がおありでしたら、ぜひドラマ「スロースタート」HP掲示板にどしどし書き込んでいただければ嬉しく思います。