雨中の美術館めぐり(2)〜「水と生きる」展(サントリー美術館) 

rosa412007-07-15

 東京ミッドタウン内に移転したサントリー美術館。その「水と生きる」展で、もっとも印象的だったのは着物の型紙デザイン。雨や川の流れを取り込んだ着物2つの隣に、数種類の小さな型紙が地味に展示されていたが、その視点はとても斬新だった。
 たとえば、山々の間に波線を折り込んで違和感なく見せてしまう大胆さ、あるデザインを波型に縁取ることで水にたゆたう様を表現する意外性には唸らされた。その既成概念にとらわれない自由奔放さがカッコイイ。
 もちろん、19世紀作の薩摩切子の美しさとモダンさ。歌川広重の有名な浮世絵「東海道五十三次シリーズ」のバランスある色使いと構図にも、心は動かされた。が、その着眼点の斬新さは、ぼくの中では型紙シリーズが一番!ちなみに同展は、「水」を要素として取り込んだ美術品などを絵画、容器(和歌などを添えて)、着物や布などに分けて展示してある。キューレターの眼力が問われる企画。
 文章でああいう「型紙」デザインめいたことができるのかを、少し考えてみる。
 視覚として水色や水、液体などの要素を取り込む。音として雨や水道水が流し台を流れる様子を挿入する。「水臭い」「水っぽい」といった「水」がらみの文章表現。指の隙間から水がこぼれていく、あるいは温い水に触れた際の触覚。山の湧き水の匂いや街中のドブ川の臭い。近頃ハマッている、キリン生茶「醍醐味」の濃くなどの味覚を書き込む。ひとつの世界を、「水」というテ―マで風呂敷のようにふんわり包み込む・・・・・・。
 そんなことをあれこれ考えているだけでも、けっこう遊べる。
 最後に、 その型紙コーナーにもあったが、斜めの直線が数本まとまって描かれていると、ぼくら日本人の多くは自然と「雨」を連想する。雨を直線で表現したのは歌川広重の、あの「東海道シリーズ」が世界で初めてらしい。日本人の認識を形成してしまうほどの表現力、その凄さを改めて痛感させれらる。