石井苗子著『「元気」をこの手に取り戻すまで』(ダイヤモンド社)〜マイナスの感情を生きる方向へ逆噴射するという方法

「元気」をこの手に取り戻すまで
 偶然、宮成さんの本と同じ時期に新刊本として書店に並ぶことになりました。元テレビキャスターで、女優の石井苗子(みつこ)さんと、ぼくが1年近く対話を重ねて生まれた一冊です。どちらも逆境から夢を実現したという共通点をもっています。
「マイナスの感情を生きる方向に逆噴射する」
 それが石井さんの新刊のテ―マです。それは恨みや怒りといったエネルギーを一概に否定せず、むしろそれをバネに、未知の分野に飛び込んでみること。その逆転の発想こそが、石井さんの言う「逆噴射」です。マイナスの感情を武器にすることで、人は以前よりパワフルに立ち直ってこられることを、彼女は身をもって証明しました。
『「元気」をこの手に取り戻すまで』という表題どおり、石井さんが不倫報道から芸能界を追われ、嘆きや悔しさなどのマイナスのエネルギーに時にむしばまれ、あるいは引っ張られながら、聖路加看護大学から東京大学医学部大学院への入学を果たす軌跡が書かれています。
 ただ、それは真っ直ぐな道のりではありませんでした。
 酒瓶を抱いたまま朝を迎えるような失意の日々。あるいは復学した大学から一歩外に出ると、唐突にぶり返す病的な感情。それらがこの本が持つ、もうひとつのリアリティーです。死や病と向き合った人の言葉が時に私たちを強く揺さぶるのは、健康や若さに執着するあまり、人が生老病死を生きるしかない現実を見失いがちなことに、改めて気づかせてくれるからだと思います。