八瀬・瑠璃光院(るりこういん)〜京の紅葉の穴場か 

rosa412007-11-16

 地元の友人の勧めで、午前中は八瀬の瑠璃光院に出かける。大原の手前、比叡山ロープウエイの出発駅から徒歩5分。今月30日まで特別公開されている。いわゆる観光ガイド本には、あまり載っていない穴場。行ってみると、かなり巧みな演出がほどこされていた。
 
 まず1階で縁側に座って、初秋の色づきを見せる庭をぼんやりとながめる。今年は暖冬のせいもあって、紅葉の出足はかならずしも早くない。それから2階にのぼると、1階では見えなかった絵文字のような、同じ庭のデザインが表れる(右写真)。あえて、モノクロ写真をアップするので、思い思いの色を夢想していただきたい。高低差をつけて、同じ庭の違う姿を見せるという趣向だ。
 
 さらに、その庭と反対側を見ると、大胆な借景で、色づく山を正面に望み、手前の瑠璃光院の紅葉がかなり濃厚に染まっている。このコントラストの鮮やかさは素晴らしい。ここで、しばらくボーッと阿呆面で時間をすごす。身も心も、その光景に放り投げてしまう気持ち良さったらない。くしくも晩秋のフランス・アルザス地方から、中秋の京都への、幸運な紅葉狩り

 
 しかも、そこから室内を進むと、1階より下の半地下めいた場所に下りていく。そこでは、右側の庭木の先に、遠くの紅葉が望める。正面には、臥竜の形に水が張ってある。左側の斜面には細かい緑の植生がひろがり、先の1階の窓を見上げると、その先に青空がひろがる。

 
 これほど多層的な見せ方は、なかなか他の庭園でも観られない。その熟達のプレゼンぶりに手元の資料に目を落すと、作庭は佐野藤右衛門一統。ここでも一度本を紹介した、あの桜守の佐野さんのグループと知って、なるほどと納得させられた。明日以降、寒さが厳しくなるということなので、あと1週間もすれば、より美しい紅葉が見られるはず。今月末までに、お近くの方はぜひ一度お出かけください。 
桜よ―「花見の作法」から「木のこころ」まで (集英社文庫)