重森三玲の、ふたつの庭をめぐる幸福 

rosa412007-11-17

 16日の午後2時に、京都大学正門から徒歩5分の重森三玲旧宅、現在の庭園美術館を訪問。ここは、数年前にある液晶テレビのCMに使われて人気が高まり、一般公開が始められた。1日午前と午後1時間ずつの限定公開で、事前予約が必要と、かなりマニア度が高い。平日午後ということもあり、ぼく一人かなと出かけると、外国人1名をふくみ老若男女で全10名が集まっていた。
 
 右上写真のように、三玲得意の立石が乱立しているように見えるが、実際にはひとつひとつの石は薄く、写真ほど威圧感はない。そこに風に揺れて落ち葉が静かに落ちていく。松尾大社のパンクロックみたいな庭や、東福寺方丈庭園のモダンな変化を見せる庭を観た人間には、正直言って少し食い足りない。ミニチュア感がぬぐえないせいだ。
 
 ただ、自宅の庭にさえ、おびただしい立石を配さずにはいられなかった男の心中を想うと、妙に切ない感慨をおぼえる。生老病死を生きるしかない人間が、時間の流れに抗うように屹立させた祈りめいたものを、それらの立石に感じるからだ。一方、枯山水の庭において理想郷とされる蓬莱山の思想を、三玲なりに消化させたものにも思える。
 
 実家に泊まった翌日は、あまりの好天に欲が出て、正午すぎに、東福寺へ向かった。方丈庭園ともうひとつある、三玲作の光明院庭園が見たくなったから。この日は土曜日ということもあり、有名な空天橋からの紅葉見学にバスツアー客などが大挙して押しかけていて、えらい混雑ぶり。そこを素通りして、一路光明院に向かうと閑散としていて、ホッとした。

 
 ここは広大な海みたいな庭なので、なかなか一枚には収められない。しばらく、あちこちの場所を移りつつボーッと眺めてみて、このアングルで撮影した。この正面の緑は全面ツツジで、山の斜面みたいに庭を包囲しているので、5月頃は、紅葉とは違った艶やかさが見られるだろう。この位置にしばらく座っていると、なんか山の渓谷をながれる川に棲む魚みたいな気分になってきた。
 これで、京都にある三玲の主な庭は全部巡ったことになる。1時間半ほど光明院庭園でぼんやりして、京都駅で蓬莱の豚マンを買い、大満足で帰京した。