ライラック酔い


 冬の間、そのコンテナは、まさに枯れ木も山のにぎわいといった趣きです。生命感のかけらもない。それが毎年3月中旬から下旬にかけて突然、枯れ切った枝々から小さな緑葉が噴き出します。それは本当に小さな春の噴水のようです。うちの奥さんは、それを緑のミニバラと呼んでいます。


 今年はその花と枝を切って、洗面所とリビングテーブルに投げ入れてみました。それで初めてその濃厚な香りに驚かされました。最初は新鮮で心地よくもあるのですが、しばらくするとちょっとうんざりしてしまう。それほど強烈ないのちの匂いなのです。