20年ぶりの再会


 変わらないな。
 龍さんも変わらないですよ。
 とっさに固い握手をしながら、互いにそう言い合うと頬がゆるんだ。一方で、20年ぶりなのに、おれは変わってないのか、という一抹のさみしさも覚えた。・・・ただのないものねだりか。


 43歳の割に彼は若い。体形もさして変わってない。彼にも、今の自分がそんなふうに見えたのなら、とくに悪い気はしない。相変わらずチンピラみたいなもんだし。


 JFK空港からイエローキャブに乗り、たしかエジプトからやってきたという黒人の運転手の運転で、彼のアパートがあるブルックリンを目指した。初めてニュ―ヨ―クは曇天の雨もようだった。ぼくがブルックリンで一番好きだった場所、プロスペクトパーク近くの交差点で降りて、近くの公衆電話からメモ書きの番号を押すと、
「トゥ―――トゥ―――」
 あの妙に長い間合いの呼び出し音をへて、彼の声が聞こえてきて、とてもホッとしたあのときの気持ち、あの高揚感が鮮やかに思い出された。彼とはあのときが初対面だった。わずか3ヵ月ほどのNY滞在だったが、芋づる式にいろんな場面がよみがえってくる。


 彼は94年までNYにいて帰国し、今は群馬県の実家の家業を手伝っているという。今日は夕食も一緒にとれなかったので、次回、彼が上京した際、当時の友人たちと集まることを約束して別れた。
 どんなに頼りない絆でも、めぐり会うときは会えるもんだ。