NHK「下流の宴」(火曜ドラマ午後10時放送第1回目放送・全8回)

 漫画チックな黒木瞳が奮闘している。
 早稲田出身のエリートサラリーマンと結婚、一男一女に恵まれた順風満帆のはずだった専業主婦生活。それが息子の高校中退から暗転しはじめ、漫画喫茶で働くフリーターの息子が、同じくフリーターの沖縄生まれの女の子と結婚すると言い出して・・・。


 不登校や引きこもりを支援するNPOの若者たちに事前取材されただけあって、このフリーターの息子の、母親への冷めたコメントの数々にリアリティがある。「あの人、他人の話を一応聞くようなフリはするんだけどね」とか。


 親子の生きてきた時代背景と価値観が大きくズレ始めるとき。それに伴っておこる家族内の混乱と葛藤の中で、ドラマは展開していくのだろう。


 息子のドロップアウトをなんとか食い止めようとする黒木瞳のが、今までとは少々違った役柄に取り組んでいる。ドラマ終盤、息子が自宅に連れてきた彼女に対する、彼女の心の呟きが笑える。
「あっ、いちおう、立ってお辞儀するんだ」
「うちは、アールグレイをイギリス製のティーカップで出す、そういう家なのよっ!」
 さすが中園ミホさんの脚本!
 また、床に落ちて歪む生卵の黄身、くしゃくしゃのストロー袋が水滴で濡れてジュワと立てる音。そういった細かなショットが、黒木の心象風景を代弁していて心憎い。