開墾デイズ(稲刈り&おだ掛け)

 ひょろっと長い緑色の茎と、黄金色の実。稲一本はおどろくほど頼りなげで、よくもまあ雨風にも負けず、頭を垂れるほどの実をつけたものだと、あらためて思う。しかも、一年前はただの野ッ原だった場所だ。そこに去年とは違う驚きと喜びがある。今年は雑草があまり生えなかったこともあり、あまり手をかけなかったことを考え合わせると、田んぼの力をまざまざと感じる。


 水が引き、亀裂が入った田んぼから稲束をつかみ、二束ずつまとめて刈る。一定量を刈り取ったら、今度はそれを三束ずつまとめ、昨年脱穀した際に出た稲藁を水に濡らして束ねて留めていく。そう「結ぶ」のではなく、いったんぎゅっと結んでから、人差し指の先を入れて隙間をあけ、そこに結んだ稲わらの先をグルグルよったものを差し込み留める、のだ。稲わらを水で濡らすのは、そのほうが切れにくいから。天日干しするために組み立てたおだに稲束を掛けていく。


 最初こそぎこちなかったが、次第に去年の感覚がよみがえっていく。古代から伝わる、わたしたちの国の食べるものを育て収穫する技術が自分に備わっていること。農家だった母方の祖父の遺伝子が、おだやかで口数少なかったその祖父の血が、自分にも流れていることをしみじみと実感する。