かすみがうらマラソン〜忘れられないラスト7キロ

 奇跡や、奇跡や、奇跡やと心の中で叫びながら走った。
 その喜びをエネルギーに換えて、もっともっと走りたかった。35キロからの約7キロをこんなに普通に走れたのは初めてで、まるで未知の疾走感だったから。いつもなら30キロ過ぎで乳酸がたまり、35キロすぎは歩いているのか、走っているのかわからない状態なのに。

 勝因は、最初の10キロを今までより15分近く遅い70分で入ったことか。今回はバタバタしていて練習で15キロ以上も走れず、一時は出走を取り止めようかと思ったほどだった。だから5時間完走を目標に切り換え、遅いペースで今までは違うマラソンを試みようと思った。

 それでも25キロすぎには、下半身がどんよりと重たくなり、ゆっくり入ってもまたここで失速かと落胆した。それで35キロの給水所で、紙コップの水をふくらはぎと太ももにかけたら、なぜか身体が妙に軽くなり、冒頭のような走りで最後まで押し通すことができた。

 記録は4時間37分と今までで一番遅い。
 でも、最後の一番苦しいところをきちんとマネジメントできたことがうれしいし、誇らしい。地味な筋トレや加圧トレの成果か。両手で一滴の水も出ないほど雑巾(ぞうきん)を絞り切るみたいに、ドMなぼくは心と身体を絞りきるマラソンから当分足を洗えそうにない。

 また、子供や女子中学生たちとハイタッチしたり、「この日のために漬け込んだニンニクなんだぁ」と叫ぶお爺ちゃんの醤油漬けを補給したり、沿道でなぜか一様に白いハンカチーフを振って応援してくれるおばあちゃんたちや、伴走者と走る視覚障害者ランナーの頑張りにも、たくさんのパワーをもらったことにあらためて感謝したい。