心の磨き方〜川田修著『僕は明日もお客さまに会いに行く。』(ダイヤモンド社)

 2泊の大阪出張中、ホテルを出る前に、部屋のハンドタオルで洗面台周りをきれいに掃除した。外資系生命会社勤務の川田修さんから、以前贈っていただいた『仕事は99%気配り』(朝日新聞出版)の中でもっとも印象的だった彼の習慣の、猿真似だ。


 川田さんはけっして顔を会わせることのない客室清掃人の笑顔を引き出す目的で、それをつづけていると書かれていた。営業テクニックではなく、「どれだけ心で相手に接しているか」を最優先するトップセールスマンの、思っても見なかった心の磨き方を目の当たりにしたとき、その数行に圧倒されたことを今でもよく覚えている。
 猿真似のスチャラカは、ハンドタオルで洗面台をきれいにしながら、その日お会いする人たちの電話での声音やメールの文面から、その人となりを想像するようにしている。


 川田さんが営業術をストーリー仕立てにした上記の新刊を今春出版され、また贈っていただいた。処女作かつヒット作である『かばんはハンカチの上に置きなさい』出版の際にお手伝いさせたいただいただけなのに、その律儀さに頭が下がる。
 大阪へ向かう車中で一気に読み終えた。テンポのいい文体、営業マン心理や、営業現場の的確な描写力は相変わらず、だ。JR大阪駅前の書店ではどど〜んと平積みされていた。


 営業マンだけにかぎらず、わたしをふくめ、仕事で向き合う相手の信頼をどうつかむのかは、テクニック以前に、人としての振る舞い方、心の在り方が問われる。ノルマや売上高といった数字にとらわれるあまり、ついつい見過ごされがちな本質で、伝説の営業マンとの交流を通して、中堅営業マンがそのことに気づいていく内容。
「感謝と愛情」
 本の後半に出てくる大きな手書き文字に、それまでのストーリが凝縮して見えてくる構成が見事。

僕は明日もお客さまに会いに行く。

僕は明日もお客さまに会いに行く。