盛岡冷麺対決〜新興「盛楼閣」VS 元祖「食道園」

rosa412004-08-04

 先週、青森出張の帰りに一泊した盛岡で、知人との20年ぶりの再会以外に、もうひとつ楽しみがあった。盛岡冷麺をめぐる「一人どっちの料理ショー」だ。朝鮮半島の北部(現在の北朝鮮)の咸興(ハムフン)で生まれた故・青木輝人氏が、昭和29年に開業した「食道園」で初披露したのが、盛岡冷麺の始まりとされる。
 カタクリ粉と小麦粉をあわせた麺は独特の強いコシと歯ごたえで、東京ではなかなか食べられない。昭和40年代に入ると、盛岡市内にも焼肉店が増え、この食道園の冷麺をベースに、さまざまな冷麺が作られ始め、盛岡冷麺は名物料理となったという経緯がある。(下記データを参照ください)
 一方、地元の人が「昔は食道園だったけど、今は冷麺といえば、ココでしょう」というのが、JR盛岡駅前ビルの2階にある「盛楼閣」。この盛岡冷麺新旧対決が、ぼくの盛岡泊まりの隠れテーマだった。
 みもふたもないけど、盛楼閣の900円冷麺は、明らかに食道園の850円冷麺の改良版だ。まず麺は食道園のそれより太めでより歯ごたえがある。さらに牛肉もしっかり煮込んで味をつけた、小さくて固めな食道園のそれを、より大きく柔らかめにしてある。また、スープの濃くも盛楼閣の方がある。カクテギの辛さがほどよく混じると、そのスープがさらに奥行きを増す。
 結局、ぼくは両方のスープをきれいに飲んでしまった。さらにこの時期、盛楼閣のには新たに甘いスイカ一片も載せてある。実に洗練されている。単純に商品だけを比較すれば、盛楼閣の方が美味しい。
 しかし、だ。前述の青木氏が働いていた数寄屋橋焼肉店でもすでに、このスタイルの冷麺が作られていたらしい。だが明確なレシピがなく、結局、青木氏は幼き記憶をなぞるような地道な試行錯誤をへて、盛岡での開業後に人々に愛されるメニューに昇華しえた。そのストーリーを今なお体現するかのように、食道園の冷麺は、その小さくて固めの牛肉の煮込み方にも無骨さがある。いたずらなトッピング思考もない。
 改良版が増えても、何ら動じることなく、故人の製法を守り続けている「食道園」の姿勢に、ぼくは敬意をおぼえる。そしてなお地元の支持を集めている。平日午前11時半の開店直後に入ると、テーブルは6割方埋まっていて、いきなり「冷麺11!」なんてオーダーが厨房に入っていた。そこでぼくの判定は、その男気と頑固一徹ぶりで「食道園」冷麺の勝ち!(右上写真)顧客志向と、顧客にこびることは似ているようで違う。そのことを「食道園」冷麺に教えられた気がする。
 また、奥さんのお土産に、駅構内のお土産物店で見つけた「ぴょんぴょん舎」の冷麺を買って帰った。食道園並みの太さの麺だったが美味しかった。盛岡冷麺は有名店ならどこでもレベルは高そうだ。
 ちなみに、同じ咸興(ハムフン)冷麺を名乗り、コシのある細麺ながら、辛くて美味しい冷麺を食べられるのが、東京赤坂にあるチョンギワ。ちなみにこちらは汁なし冷麺がおすすめ。2000円と高いけど、その価値はじゅうぶんあるとぼくは思います。興味がおありの方はお試しあれ。でも文句、クレームはご勘弁ください。

盛岡冷麺物語&お店情報
http://www.odette.or.jp/citykankou/ka_c_ea_i4/ka_c_ea_i4.html
●チョンギワ情報(でも本場韓国の味っていう取材記事は、大嘘なんだけどね)
http://www.gcon.jp/h/50714/