NHKハイビジョン『列島縦断 鉄道12000kmの旅〜最長片道切符でゆく42日間』〜豊かで美しい日本の姿

rosa412004-08-10

 一昨日につづき、NHKづいている。ふと観た番組が予想外にいい。今日夜8時から9時55分までNHKハイビジョン放送でやっていたのが、鉄道12000kmの旅だ。俳優の関口知宏関口宏の息子)が、北海道の稚内を出発、肥前山口までのJR線で列島縦断するという。以前42日間にわたって放送したものを総集編形式で、今日から3日連続シリーズだという。
 まず車窓の風景が素晴らしい。地方都市もふくめて、日本の町並みには個性がなくなったとかいわれてて、ぼく自身、取材であちこちウロウロしていて、同じような感想をもっていたけど、それはやっぱり都市しか見てないからだと思い直した。本来、渡り鳥である丹頂鶴が住み着いてしまった釧路平原に始まり、まだまだ豊かで美しい風景はいっぱい残っている。
 この番組のもうひとつの魅力は、この旅を味わう俳優、関口知宏だ。正直に言って、親の七光りタレントかと今まで僕は思っていたけど、それははなはだ見当違いだった。
「今、世の中はどんどん無駄なものを省いていっているのに、僕は一人でこんな無駄だらけな旅をしている。この旅からいったい何が見えてくるんだろう」
 そんな飾り気のない率直な言葉が、この番組の裏テーマをきちんと語ってもいる。けっして演技ではなく、人への礼儀正しさ、素直さ、純粋な人柄が画面からきちんと伝わってくる。いい家庭できちんと躾けられた人だった。関口さん、ごめんなさい。
 所々で、駅を出て美味いものを食べ、地元の人とお茶を飲みかわし、温泉につかり、三味線を習う。そんな人との出会いもきちんとしながら、旅を進めていく。
 釧路駅前の海産物センターでは、勝手丼というのがあった。海産物のお店が集まるそこで、各店から自分で好きなものを選んで、それをどんぶりとして食べられるんだって。トロみたいな鮭や新鮮なウニ、イクラなどを山盛りのせ、なんども「うめぇ〜」を連発している彼も、実に羨ましかったし。
 番組の終わりの関口のモノローグも良かった。
「今日、棚田に生まれて初めて入って、田植えを手伝わせてもらった。水をはった土がにゅるっとしていて、そのとき、なぜか生きてるって感じがした。そういえば、ぼくは自分が食べるものを今まで一度も作ったことがない」
 こういう番組を観ると、無性に一人旅がしたくなる。

●『鉄道12000kmの旅』http://www.nhk.or.jp/bs/