井上さんと乃木坂「カフェドラペ」

rosa412005-05-03

 一冊の本以上に、多くの刺激と視点をあたえてくれる対話というものがある。先日、京都で再会した学生時代の友人たちと過ごす時間もそうだが、東京という場所で、そういう時間を共有できる友だちというのは、そう多くない。
 大手コンビニの幹部候補生の人生をドロップアウトして、カナダで日本式たい焼き屋を成功させて帰国、その後、横浜に自宅のようにくつろげるカフェ「セカンドカップ」を開業させた井上さんは、取材をきっかけに仲良くなった一人だ。昨年、銀座に
「えすとカレー」
を開業し、またたくまに人気店に。今度は人気カレー店ひしめく神保町に、まもなく「えすと」二号店を出店予定だ。
 この日は、乃木坂でその井上さんと昼食。土地勘があれば、チャリンコで出かけたいような晴天だった。彼おススメのイタリアンレストランでピザを食べて(美味しくてリーズナブル)、彼が「荒川さん絶対気に入りますよ」という「カフェドラペ」ヘ。店内はウッディーな作りで、白壁が少々コーヒー色になっている。奥にはオープンエアな空間があり、その反対側には、ガラスばりの空間もある。ニューヨークのイースト・ビレッジでよく通っていたカフェを思い出した。もちろん、たいへん気に入った。
 海外での事業計画にむけて着々と地歩をかためる井上さんの話を聞いていると、こちらまでワクワクしてくる。愛情と情熱あふれる彼の若手従業員育成話も興味深い。店の戦力になりたいと、しゃにむに働く若手たちは、お金以上の価値をそこに見出している。そういう文化を創り出せるのも、彼ゆえだろう。
 昔、横浜中華街で彼がアルバイトしていたという天龍菜館の80歳のオーナーシェフにも、ぜひ一度会ってみたくなった。
 帰りは、彼に教わったとおり、乃木坂から青山墓地をぬけて根津美術館に出る道を歩いて表参道へ。耳元で鳴るオーティス・レディングの哀切で伸びやかなヴォーカルが、五月の青空と心地いい風にすうっと溶けていく。わずか10分少々だったが、心が軽く、そしてきれいになるような散歩になった。だが静かな乃木坂周辺とは対照的に、表参道の交差点から原宿駅一帯は、歩行者やおのぼりさんでごった返していた。