宮沢りえ〜バスキアっぽい絵を描く女(ひと)
縦1m横2mほどの白い画用紙に、まずチューブからひねり出した二色の絵の具の塊(かたまり)を落とし、それを右手の人差し指と中指でさっとこすると、二色が微妙なグラデーションをみせて、ひとつの柄となる。あるいは、そうして彼女が手で描いたらしい黒人の絵の上に、今度はチューブのキャップを外して、そのままひねり出しながら線を引いていく。
女優、宮沢りえがアフリカで見せた、その絵の具づかいは、とても大胆、そのくせ的確で、とても楽しそうだった。観ていて、とてもワクワクさせられた。
NHKハイビジョンの彼女を対象としたドキュメンタリー番組で、アフリカ・ロケの場面だった。そうして彼女が描く絵は、どこかシンプルなバスキアっぽさをたたえていた。1998年に27歳の若さで夭折した、80年代のニューヨークを代表する黒人アーティスト。近年、ユニクロが盛んにTシャツに彼の絵を採用している。
宮沢のあきらかに挑戦的で特異な色づかいや線は、女優としての感性トレーニングのように、ぼくには見えた。既成概念からできるだけ遠くへいきたい、そんな押し黙った言葉が、画用紙に向う無邪気で、真摯な彼女の横顔から透けて見えた。
- 作者: レオンハルト・エメルリンク,Fumie Nosaka
- 出版社/メーカー: タッシェン・ジャパン
- 発売日: 2004/08/01
- メディア: 単行本
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