NHK総合テレビ「人口減社会」〜ぼくの節穴とヤツらの節穴と

rosa412005-06-26

 自分の目が節穴だということをときどき忘れる。いや、忘れるからこそ節穴だ、といわれればそうなんだけどね。
「『女性の働き方』という設問自体がおかしいと思います。働き方に男女の別はないし、『人間の働き方とはどうあるべきか』というテーマにしていただきたい」
 そう発言したのは、パネリストの一人、民主党水島広子衆議院議員だった。一般参加者に議論してもらおうとした、男性司会者がその発言にビックリしていた。偶然、その番組にチャンネルを合わせていたぼくも、司会者同様におどろいた。どうやら、司会者もぼくも、そんな問題意識がまるで欠落していたらしい。
 すると、パネリストの遥洋子(エッセイスト)が、こんなニュアンスの発言をした。
「働き方で男女を分けるという発想は、そもそも男性の長時間労働を基準にしていて、それと女性の働き方を区別する意味合いがあるのではないでしょうか。定時以上に残業することが、会社への忠誠心を示し、熱心な働き方として評価される男性中心社会の価値観です。そして結婚や出産をした女性たちが、元の会社に戻りにくい理由は、職場復帰は男性なみの長時間労働を余儀なくされるからです。ただ、一方で長時間労働が前提の働き方には、男性たちもかなり疲弊してきています」
 だから、男女の区別なく、もっと人間らしい働き方とはどうあるべきかについて、議論すべきだと彼女はつづけた。
「職場には遅く来て、帰るのは誰よりも早いなんて重役なみだね」
そんな中傷を、子どもを保育園に迎えにいくために定時で退勤する女性たちに、男性上司が投げつける状況があるのだと遥さんはいう。
 だから女性が働きやすい環境を整えるということは、女性だけを特別扱いするのではない。人口減社会だから、外国人労働者の導入を議論する前に、国内にいる定年退職者や、結婚や出産で退職した女性や、専業主婦やフリーターの若者たちが、働きたいときに自由に働ける仕組みづくりを考えるべきだろう。
 遥さんの意見は、とてもシンプルでわかりやすい。”雇用形態の多様化”なんてキレイごとを喧伝する割に、長時間労働という前提は聖域あつかいで、だからこそ女性や高齢者より、外国人労働者をという発想になる。だけど、外国人を入れると治安が悪化するなんて心配してるヤツらも、かなりの節穴ぶりだよな。
長時間労働を前提とした男性中心社会は、そんな家庭生活を支えている奥への感謝というベクトルも欠落している」
 遥さんのこの指摘にも、ぼくはドキッとさせられた。家事一切を奥さんに任せている割に、ぼくも感謝の気持ちが薄いからだ。家計を支えている自分の方が大変なんだぜぇ、という傲慢さが確かにある。今度はこっちの節穴がうずき始める。
「女性の働き方」という言葉に、ぼくがあまり違和感を覚えていなかったのは、やはり、ぼくの頭にも「熱心な働き方=定時をこえた長時間労働」「稼いでる人間が偉い」という男性中心社会的な考え方が巣くっていたからだろう。ただ、それを反省してリベラルを気取るつもりはない。そういう自分の節穴ぶりを忘れていたことを書いておきたいだけ。