ボブ・ジラルディ監督『ディナー・ラッシュ』〜人間のあらゆる欲房を「レストランの一夜」に詰めこんでみせた手腕、でもボクが恥ずかしい理由

 
 よく考えれば、おしゃれなレストランほどいかがわしい場所はない。食欲・性欲・名誉欲・金銭欲・出世欲(野心)などなど、種々雑多な欲望が隣り合わせに並存している場所だから。
 そんな視点でレストランをとらえ、そこでの一夜の出来事に殺人事件をからめる、というアイデアはイイ。客席と負けず劣らず猥雑(わいざつ)なものとして厨房を見せている点もいい。こういう着想と見せ方は、文章書きにはとても参考になる。
 音楽のセンスも、テンポのいいカット割りもカッコイイと思い、この映画のwebサイトを見たら、監督のボブ・ジラルディは、米国のテレビCMやMTVビデオ製作の巨匠らしかった。な・る・ほ・ど・ね。しかも彼自身、ニューヨークにある有名レストランのオーナーだったりするんだってさ。
 映画の中で、ヌーベル・キュイジーヌの旗手であるシェフが「ロブスターのシャンパンソース・バニラ風味」と「ワサビ風味のいくらととび魚の卵にチャイム添え」を作る場面のスローモーションと、そこに唯一ジャズだけが音としてかぶさっていく映像が、いかにもニューヨーク風、かつMTV的な感じでカッコイイけど、半面すごく恥ずかしい。だってカッコつけてるイケメンって、なんか見てる方が恥ずかしくなるから。