フ〜ッと付いて行ってしまいそうになるわ

　近頃、高校時代の友人が、やたらと異動で東京近辺に赴任してくる。先日、その一人、Ｙ．Ｓから電話があった。大阪に家族を残しての単身赴任だ。彼で３人目。単身赴任２人、家族そろっての赴任１人だ。
　Ｙ．Ｓは赴任１週間で、その口調が早くも東京弁めいていた。「周りがどしてもそうやから、うつってしまうねん。でも、よくよく考えると、部署の大半は大阪出身なんやけどな」
　どうやら、某コンサルタント会社の人間が、各セクションに入っていて、ヤツの部署も、立場上、そのコンサルがイニシアチブを握っているらしい。
　最初の一週間は、土曜出勤ありで、退社時間は１１時前後ばかり。会社を後にして、ふらふらと新橋・烏森周辺を突っ切ろうとすると、かわいいアジア系の女の子が、かわいい笑顔で話しかけてくるらしい。
「毎日疲れてて、けっこう可愛い子から声かけられると、なんかフ〜ッて付いて行ってしまいそうになるわ、ほんまに」
　Ｙ．Ｓの溜息はとてもリアルだった。家族とも離れ、不慣れな単身生活で、誰もいないマンションに戻る孤独を濃厚ににじませていた。まだ娘さんたちも小・中学生なのだ。東京弁と新橋・烏森の誘惑にも負けずに、Ｙ．Ｓよ、がんばれ！