大西暢夫監督ドキュメンタリー映画「水になった村」〜「エコ」だ「ロハス」だと言う前に

rosa412007-06-25

 ダムという言葉をきいて、ぼくがまず連想するのは田中前長野県知事の「脱ダム宣言」くらいか。それぐらい自分からは遠い言葉になっている。しかし東京や大阪などの大都市には、かならずそこで消費される水を貯めるダムがつながっていて、その多くが山間部の村や町を水の底に沈めて作られている。
 先週、この映画の試写を観るまで、そんな連想する回路さえぼくの頭からは失われていた。映画『水になった村』は、岐阜県徳山村がダムに沈む前後の15年間を足繁く通った大西君の初監督作品。映画「アレクセイの泉」でベルリン国際映画祭ベルリナー新聞賞受賞した、本橋成一さんの弟子でもある。
 ぼくの「便利」な生活がダムとつながっていて、生まれ育った村や町をそのために捨てざるをえなかったオジイチャンやオバアチャンの無念ともつながっていること。ダムの完成で故郷を追われた人たちが、こぎれいな新居でぽつねんと時間をやり過ごしていたり、少しボケだしていたりすること。その様子を目の当たりにしながら、彼らの生活の場と生きる権利を奪った加害者の一人としての自分に気づかされた。
「エコ」とか「ロハス」とか、ちょろい言葉でラベリングするのもいいけれど、自分の「便利な」生活がその足元で踏みにじっているものや人々と、この映画を通して向き合ってみることをお勧めしたい。8月4日より、ポレポレ東中野にてロードショー予定です。