映画

本谷有希子原作「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」〜こんな時代に作品のエッジを立てるとは

予想どおり、エッジのおっ立った物語だった。何より、タイトルが抜群。本谷有希子さんの世界は、無造作なくせに精緻で、エグイくせに悲しげで、パワフルなようでいて刹那的な、まさに今のわたしとあなたが暮らす世間の物語「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ…

大西暢夫監督『水になった村』ロードショー開始〜「便利」の向こう側で起きている出来事 

BOX東中野(JR総武線「東中野」駅徒歩1分)で、本日よりドキュメンタリー映画『水になった村』が上映開始です。15年の歳月をかけて、ダムの下に沈んでしまう村のオジイやオバアを追い続けた労作。この日誌でも(id:rosa41:20070625)で紹介しました。…

大西暢夫監督ドキュメンタリー映画「水になった村」〜「エコ」だ「ロハス」だと言う前に

ダムという言葉をきいて、ぼくがまず連想するのは田中前長野県知事の「脱ダム宣言」くらいか。それぐらい自分からは遠い言葉になっている。しかし東京や大阪などの大都市には、かならずそこで消費される水を貯めるダムがつながっていて、その多くが山間部の…

羽田澄子監督『終わりよければすべてよし』〜死ぬ権利ということ 

映画の中に出てくる2人の女性が、印象深かった。真っ白なシャツに、真っ赤なブラウスを羽織った60代相当のスウェーデン女性はとても凛としていた。「昨日は自宅に戻って、できる範囲で家事をしてきたわ。その代わり、今日はこの緩和ケアでゆっくりした時…

廣末哲万監督『14歳』〜精緻な顕微鏡で映し出される14歳たちの鬱屈 

想像力を痛いほど刺激してくれる映画に出会えた幸福を、まずは喜びたい。映画『14歳』のもつ静謐さが、登場人物たちの短い言葉や暴力的な場面を禍々(まがまが)しく研ぎ澄ましている。実際にぼくは上映中に2度ほど、顔をしかめ身体をのけぞらせた。 日々…

『敬愛なるベートーヴェン』〜芸術至上主義の交歓を描く野心作 

スローモーションで、さまざまな画像をシェイクする導入部がユニ―ク。『敬愛なるベートーヴェン』を最後まで見ると、この導入部に監督が込めた意図が明らかになる。日比谷シャンテで去年『冷血』を観た際、夫婦で観られそうだと前売券を買っていたのに、気が…